自動車保険に入れない? 高級車「レンジローバー」が英国で直面する問題とは

公開 : 2023.02.24 06:05

英国の首都ロンドンで、ランドローバー・レンジローバーの保険加入が難しくなっています。ロンドンでは車両盗難が多発しており、市内で登録すると保険会社が加入を拒むケースもあるとのこと。

盗難多発で保険料高騰 メーカーも保険取り扱い終了

ロンドンに住むランドローバーレンジローバーの所有者は、保険料の高騰と保険をかけてくれる会社が減りつつある現実に直面している。

英国のDVLA(運転免許庁)によると、レンジローバーは2022年、台数としては国内2番目にあたる5200台以上が盗難被害に遭ったという。その多くがロンドンで盗まれたもので、結果として保険会社に保険金請求が殺到し、保険会社は新規加入の中止や、保険料の値上げに踏み切った。

英国では昨年2番目に多く盗まれた車両となり、保険料が高騰している。
英国では昨年2番目に多く盗まれた車両となり、保険料が高騰している。    AUTOCAR

メーカーのランドローバーは、2022年11月1日に保険の取り扱いを終了したことをウェブサイトで発表している。同社の広報担当者は、保険会社Verexとの提携解消で相互に合意したとし、「エキサイティングな新しい保険提案」を開始する準備を進めていると語った。

AUTOCAR英国編集部は、読者のダン・アドラー氏に話を聞いた。アドラー氏は北ロンドン在住の投資家で、注文したレンジローバーP440eオートバイオグラフィーに保険をかけようとした際、この問題に直面したという。

アドラー氏は現在、ブローカー(保険仲立人)を通じて貴重なクラシックカーを含む4台の自動車に保険をかけている。「これらの保険料は合計5000ポンド(約80万円)ですが、ブローカーからは、現在の保険会社が新しいレンジローバーの加入に難色を示し、別の保険会社も6000ポンド(約100万円)請求してきたため、保険料は合計1万1000ポンド(約180万円)になると言われました。このため、購入は考えられません」

ブローカーによると、このような経験をしているのはアドラー氏だけではないという。Saxon保険のディレクター、サミュエル・シセ氏は、ロンドンの住所に登録された2台のレンジローバーに保険をかけようとしたときの問題を話してくれた。「1台は2万ポンド(約320万円)を提示され、もう1台は3万8000ポンド(約615万円)を提示されました。多くの保険会社が、ロンドンにあるレンジローバーの保険から手を引いています」

別のブローカー(匿名)は、高級車の中でレンジローバーだけが非常に高い保険料を提示されるか、あるいは全く提示されないと話している。「その理由は、窃盗犯に人気があるからです。ボルボXC90ポルシェのようなクルマなら問題はありません」

車両追跡会社AXの調査サービス担当ディレクター、ニール・トーマス氏は、レンジローバーは窃盗犯にとって利益の大きいターゲットであると言う。「レンジローバーの問題は、車両のセキュリティではなく、国内外で非常に人気があることです。窃盗犯は、レンジローバーが簡単に、しかも高値で処分できることを知っています。だから窃盗技術に投資するんです。当社はまだ新型レンジローバーの盗難被害に遭遇していませんが、窃盗犯の技術が追いつけば、いずれはあると思います」

ジャガー・ランドローバーはAUTOCARに対し、車両盗難の問題を非常に深刻に受け止めていると声明で述べた。「この犯罪が一部のお客様の保険の利用可能性に影響を及ぼしていることを認識しています。当社は、保険会社を含む関係者に積極的に働きかけ、車両のセキュリティを向上させ、犯罪行為に対抗する手段を提供していることを証明しています」

「お客様が車両を保護できるよう、当社の『リモート』アプリや、車両を監視してキーロックされていない場合に警告を発する『ガーディアンモード』といったセキュリティ機能を有効化するなど、利用できるすべての手段を用いることをお勧めします」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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