ドイツ政府 EUエンジン車禁止に「待った」かける CO2ニュートラルな合成燃料の免除要請

公開 : 2023.03.01 06:25

EU(欧州連合)は2035年以降のエンジン車の新車販売を事実上禁止する方針ですが、ドイツ政府が「待った」をかけました。カーボンニュートラルな合成燃料「eフューエル」について改めて検討するよう求めています。

合成燃料について検討を要請

ドイツ政府はEU(欧州連合)に対し、2035年以降、カーボンニュートラルな燃料「eフューエル(合成燃料)」を動力源とする新車の販売を認めるよう要請した。

欧州議会は最近、2035年以降のエンジン車の新車販売を実質的に禁止する法案を採択した。EU圏内で販売されるすべての新車のCO2排出量を100%削減するよう義務付けるもので、自動車メーカーはEV(電気自動車)へのシフトを迫られる。

合成燃料を使用すれば、理論的にはCO2ニュートラルになるとされる。
合成燃料を使用すれば、理論的にはCO2ニュートラルになるとされる。

しかし、ドイツのミヒャエル・トューラー運輸大臣は声明で、「欧州委員会はeフューエルの使用方法、あるいは気候変動に影響されない燃料で作動する内燃機関の組織化について提案すべきである」と述べ、eフューエルについて改めて検討するよう求めている。

eフューエルは、CO2と、風力や太陽光などの自然エネルギーによって生産される水素を使った合成燃料である。自動車から排出されたCO2を回収してeフューエルを生産するため、理論的にはCO2ニュートラルとされる。

現在、スポーツカーメーカーや内燃機関メーカーなどさまざまな自動車関連企業がeフューエルに注目し、その可能性を探っている。

ポルシェは、昨年末にチリで年間約13万Lを目標とするパイロット生産を開始した。当初はポルシェの体験型店舗やレースなどで使用される予定だ。2020年代半ばには年間1200万ガロン(5500万L)、その2年後にはさらに10倍まで生産量を増やす計画である。

ポルシェのeフューエルは完全なカーボンニュートラルではないが(ほぼCO2ニュートラル、と表現される)、ポルシェの元スポーツカー製品責任者、フランク・ワライザー氏は2021年に「粒子も(NOxも)少なくなっており、正しい方向に向かっています」と語っている。

また、マツダは石油会社や自動車メーカーなどで構成されるロビー団体「eフューエル・アライアンス」に自動車メーカーとして初めて参加するなど、積極的な姿勢を見せている。

2022年12月、マツダは英国のコリトン社が農業廃棄物から作ったeフューエルを用いて、無改造のMX-5(ロードスターの欧州仕様、2.0L車)でイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドを約1600km走行し、平均燃費19.4km/lを記録した。

参考までに、従来のマツダMX-5の2.0L車の平均燃費は、WLTPサイクルで17.4km/lとなっている。

コリトン社のデビッド・リチャードソン社長はeフューエルについて、「非常に優れた性能を持ち、既存の車両にも適合します。従来の化石燃料と比較して、現在のCO2排出量を大幅に削減する可能性を持つソリューションです」と述べている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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