米国の高性能EVミニバン フォード・スーパーバン、最高出力2000psでパイクスピーク挑戦
公開 : 2023.03.02 06:05
フォードは、最高出力2000psを誇るEVミニバン「スーパーバン4」を今年のパイクスピーク・ヒルクライムに投入すると発表しました。一般的な商用バンをベースに、ボディをくり抜くなど大胆な改造を施しています。
4モーターで2000ps ヒルクライムに挑戦
フォードの商用車部門であるフォード・プロが開発したEVバン「スーパーバン4」が、今年末、米国コロラド州のパイクスピーク・ヒルクライムに挑戦する。
フォードにとってスーパーバンは4代目にあたり、最新型では最高出力2000psを誇るEVとなっている。今回のパイクスピークでは、ル・マンを3度制したロマン・デュマが運転する予定だ。目指すは、2018年に7分57秒148で完走したフォルクスワーゲンID.Rのトップタイム更新である。
フォード車は100年以上にわたってパイクスピーク・ヒルクライムに参戦してきた。1916年の初開催ではモデルT(T型フォード)が出走し、標高4302mに位置するフィニッシュラインを28分3秒で通過している。このほかにも、2022年にフォード・マスタング・シェルビーGT500 SEが登頂を果たしている。
同社のパフォーマンス・モータースポーツ部門は、パイクスピークへの挑戦は、強力な回生ブレーキシステムなどの性能をテストし、披露するための理想的な場所になると述べた。
ロマン・デュマは、「フォードの最新世代のEV技術は、米国の山にぴったりです。高地では従来のエンジン搭載車のパワーが削がれますが、スーパーバン4の電動パワートレインは高地でもロスがなく、今年のレースで健闘してくれるでしょう」と話す。
大胆にくり抜かれたボディ
フォードは昨年、英国のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでスーパーバン4を公開した。商用車のEトランジット・カスタムをベースに4基の電気モーターを搭載し、0-100km/h加速2.0秒以下を達成するという。
ベース車両の最高出力は270ps程度だが、スーパーバン4はその約8倍の2000psを発揮する。これまでのスーパーバンでは、ジャガーのV6エンジンやコスワース製F1エンジン、フォードGT40のV8などを使用してきたが、最新型は歴代最速を誇るとのことだ。
50kWhのバッテリーは、重量配分を最適化するために車体中央に搭載され、急速充電器ではわずか45分で充電することができる。
走行モードはロード、トラック、ドラッグ、ドリフト、ラリーの5種類あり、走行状況に応じて出力特性を調整できる。また、ピットレーンでのスピードリミッターや、片方の車軸をロックしながらもう片方を回転させバーンアウト(タイヤを空転させて加熱すること)を行う「タイヤクリーニングモード」も用意されている。
スーパーバン4はフォードの商用車部門のショーケースではあるが、パフォーマンス部門とオーストリアの電動ラリー団体STARDの協力の下で開発された。
Eトランジット・カスタムのフロアパンの上に、スチール製スペースフレームと軽量コンポジットパネルからなるボディが載せられ、サスペンション、ブレーキ、ステアリングはすべてサーキットで鍛えられたシステムとなっている。
大型のフロントスプリッター、サイドスカート、GT3風のリアディフューザーなど、ダウンフォース強化のためにさまざまなエアロパーツが装着される。
また、ボディ後部は空力最適化のために大胆にくり抜かれ、リアエンドに向かって細まっていく独特の形状となった。それでも車内後部への荷物の積載は可能で、ドアも設けられている。
車内には、フルロールケージとFIA公認のレースシートを装備する。マスタング・マッハEからタッチスクリーンが移植されており、「レースから一息ついて、ルートを検索したり、充電器を探したり、Wifiに接続して電話をかけたりする」ことができるという。
画像 フツーの商用バンが最高出力2000psのモンスターに!【フォード・スーパーバン4とベース車のEトランジット・カスタムを写真で見る】 全38枚