世界を揺るがす中国新興EVブランド「Zeekr」の野心 あと2年で年間65万台へ

公開 : 2023.03.06 06:05

ジーリー・グループ傘下のEVブランド「Zeekr」は、中国だけでなく欧州・北米への進出も計画しています。個性的なデザインを掲げ、2025年までに販売台数7万台から65万台に拡大する計画です。

東洋の龍 個性的スタイルで覇権目指す

個性的なスタイルで中国のEV市場を揺るがしたZeekrが、今度は欧州に狙いを定めている。

2年前に設立されたばかりのZeekrは、中国のシャオペン(Xpeng)やベトナムのビンファスト(Vinfast)と並ぶ東洋のEV専門ブランドで、大胆な拡大計画を秘めている。

Zeekrのデザインは欧州車メーカー出身のステファン・シーラフ氏が務める。画像はZeekr 001。
Zeekrのデザインは欧州車メーカー出身のステファン・シーラフ氏が務める。画像はZeekr 001。    Zeekr

ある関係者はAUTOCARにこう語っている。「Zeekrの目標は、2025年までに年間65万台の販売を達成し、高級EVブランドとして世界のトップ3に入ることです」

これは決して夢物語などではない。なぜならZeekrは、ボルボポールスターロータススマート、Lynk & Coなどとともに、拡大を続けるジーリー・グループの傘下にいるからだ。同グループは、すでに高級EV市場に対して積極的なアプローチを試みている。

Zeekrが兄弟ブランドに影響を与えることなく、高級EV市場でどのように活動していくのか、当然のことながら疑問が呈される。しかし、Zeekrはメリットのみを挙げ、次のように述べている。「すべての(ジーリー)ブランドは、リソースを最大限に活用し、お客様により大きな価値を提供するために、協力関係を求めています」

他のブランドとの最も大きな差別化要因は、デザインに対するアプローチである。Zeekrは、「退屈なEVはもういらない」という決意表明のもと、ジーリーのデザイン責任者であるステファン・シーラフ氏(VWグループで注目を集めた人物)が「プレミアムな外観と雰囲気を、豪華絢爛とは異なる方法で表現する」として立ち上げた。

これにより、Zeekrは「マトリョーシカ人形」的なデザイン(モデルの区別がほぼサイズのみによって定義される)から距離を置くと言われている。

Zeekrがこれまでに発表したモデルには、流麗なファストバックの001と、ブロック状のルックスが印象的なミニバンの009がある。

今月初め、ミドルサイズのクロスオーバーとして公開された新型Xは、おそらくフォルクスワーゲンID.3のライバルと考えるのが妥当だろう。

自動運転ウェイモとも提携 米国で存在感

Zeekrのデザインスタジオはスウェーデンのヨーテボリにある。中国以外への展開の具体的な計画については伏せられているが、欧州が視野に入っていることはすでに明らかである。

中国メディアは、2022年に7万台だった販売台数を今年14万台に倍増させる計画で、欧州大陸が重要な役割を果たすと報じている。北欧の成熟したEV市場(ドイツ、オランダ、ノルウェーなど)がまずターゲットになるようだ。

新型「X」は最大435kmの航続距離を誇る高級志向のEVだ。
新型「X」は最大435kmの航続距離を誇る高級志向のEVだ。    Zeekr

米国への進出については、12月に大胆にも新規株式公開を申請していることから、その意図が知れる。

ロイター通信が伝えるところによると、Zeekrは10億ドル(約1360億円)以上の資金調達を目指し、評価額100億ドル(約1兆3600億円)以上を目標としているという。これは、2021年の最初の外部資金調達での評価額90億ドルを上回るものだ。

しかし、CEOのアンディ・アン氏が1月のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で、Zeekrは米国の消費者市場には参入しないと発言したことから、当面の優先目標ではないようだ。

とはいえ、グーグルの親会社アルファベットが所有するカリフォルニア州の自動運転会社ウェイモ(Waymo)との提携により、米国で存在感を示すことになる。11月には、ウェイモがZeekrのSEA-Mプラットフォーム(ジーリーのSEAの応用)を、中国製のロボットタクシーのベースとして使用することが明らかにされた。

Zeekrは、このプラットフォームが「将来のさまざまなモビリティ製品」を支えることになると述べ、「可能性を追求するために、世界中のパートナーとの協力に前向きである」とした。

つまり、Zeekrをベースにした自動運転車や、Zeekr独自の自動運転車が登場する可能性があるということだ。これも、「独自のアプローチで物事を進めたい」という野心の表れである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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