驚嘆の二面性を生むW12 ベントレー・フライングスパー・スピードへ試乗 内燃エンジンの頂点

公開 : 2023.03.16 08:25

W12エンジンの終焉を発表したベントレー。その名機を積むリムジン、フライングスパーを英国編集部が評価しました。

2024年の春で生産終了となるW12エンジン

ベントレーは、W型12気筒エンジンへ終止符を打つことに決めた。初代コンチネンタルGTに初搭載されてから20年後となる、2024年の春までに生産は完了する。それ以降は、ハイブリッド・パワートレインへシフトするという。

もちろん、そっと幕引きはしない。最高出力750ps、最大トルク101.8kg-mを発揮する、過去最強の最終仕様を18基製造する計画を立てている。すべてが手作業で作り上げられる、壮観なベントレー・マリナー・バトゥール・クーペへ搭載するために。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)

購買層の方が、今その事実へお気づきになったとしても手遅れ。約200万ポンド(約3億2200万円)の特別なクーペは、すべて売約済みらしい。英国クルーの職人が仕上げる、コーチビルドの限定モデルは輝かしいフィナーレを飾るだろう。

ただし、W12エンジンはまだ1年間ほど作り続けられる。ベントレーといえば、荘厳なリムジンを思い描く方は多いはず。

初代フライングスパーが登場したのは2008年。610psを発揮するW12ツインターボをラグジュアリーなボディに搭載し、最高速度320km/h(時速200マイル)の壁を打ち破った。

今回ご紹介する、2代目フライングスパーにもW12エンジンが載っている。従来のフライングスパー W12から改称され、2023年仕様ではフライングスパー・スピードを名乗る。同時にフライングスパー V8は、フライングスパー Sへ改められた。

四駆システムで凍結路なら大胆なドリフトも

呼び方が変わっても、圧倒的なリムジンであることに変わりはない。635psの最高出力や、333km/hの最高速度へ変更はないが、バトゥール・クーペを購入できる富を持つオーナーをも満たすべく、僅かなアップデートが施されている。

スピードであることを示す新たなロゴが、シートには刺繍で、サイドシルのプレートにはエッチングで、ダッシュボードには上品なフォントで施される。装飾トリム類は、シルバーからブラック仕上げに変更された。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)

ステアリングホイール・リムはダイナミカ・ピュアと呼ばれる人工皮革で包まれる。聞き慣れたアルカンターラに代わるもので、リサイクル素材を73%用いているという。ダッシュボード中央のタッチモニターを、回転させて隠せることは従来どおり。

アルミホイールは、専用デザインの22インチが用意された。今回の試乗車は、雪深いアメリカ・コロラド州の山岳地帯を前提とした、スタッドレスタイヤに21インチという組み合わせではあったが。

部分的に凍結した早朝の路面は、知的な四輪駆動システムの能力を試す絶好の機会。ローレット加工が施されたダイヤルを回し、スポーツ・モードを選択すると、リアアクスル側へ69%以上のパワーが伝わるようになる。

長いホイールベースを持つフライングスパー・スピードは、大胆なドリフトを想像以上に容易に楽しませてくれた。もちろん、日常的なシチュエーションでの安定性も高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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