技術の粋が集結したドライバーズカー ホンダ・シビック・タイプR(FK8) 英国版中古車ガイド

公開 : 2023.03.19 08:25

和製ホットハッチの代表、シビック・タイプR。ロボットのような見た目のFK8型を、英国編集部が中古車で振り返ります。

ポルシェのGTモデルに接近したホットハッチ

今から20年前、前輪駆動のフォード・フォーカス RSは、215psの最高出力で英国のワインディングを暴れまわっていた。トルクステアを隠すことなく、これ以上の馬力は必要ないと思わせた。

しかし、2017年に登場したFK8型ホンダシビック・タイプRでは、前輪駆動でありながら320psを使いこなせた。すべてのパワーを2本のフロントタイヤが受け止めたが、破綻をきたすことはなかった。

ホンダ・シビック・タイプR(FK8/2017〜2021年/英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(FK8/2017〜2021年/英国仕様)

鋭く正確な操縦性を叶えつつ、落ち着いた乗り心地を両立。技術力に長けた、ホンダの魔法のような仕上がりだった。新境地といえる能力を、英国編集部は絶賛している。

今回取り上げる先代のシビック・タイプRは、高性能モデルに相応しいコーナリングを実現しながら、普段使いも問題なく受け入れてくれる。アダプティブダンパーが組まれ、コンフォート・モードからサーキット前提の+Rモードまで、振り幅は広い。

まさしく現代のドライバーズカー。近年発売されたモデルのなかでも、ベストの1台に加えられる。

ステアリングホイールの重み付けは理想的で、ダイレクトで、手のひらを通じてシャシーと豊かなコミュニケーションが取れる。6速MTのシフトストロークは短く、小気味良く求めるギアを選べる。

新車当時、FK8型シビック・タイプRへ試乗したAUTOCARは、ポルシェのGTモデルに最も接近したホットハッチだと評価した。ドライビング体験の素晴らしさを示す言葉だといえる。

逸品の2.0L 4気筒VTECターボエンジン

2.0L 4気筒ターボエンジンも逸品。ホンダの宝刀といえる可変バルブタイミング機構、VTECを搭載し、高出力を実現しながら、排気バルブのリフト量を制御することでターボラグを最小限に留めている。

アクセルレスポンスは鋭く、吸い込まれるように7200rpmまで吹け上がる。0-100km/h加速は5.7秒でこなす。

ホンダ・シビック・タイプR(FK8/2017〜2021年/英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(FK8/2017〜2021年/英国仕様)

それでいて、お財布にも優しい。平均燃費は13.0km/Lがうたわれ、右足の動きに理性があれば14.0km/Lに届かせることも現実的。信頼性は高く、維持費も性能を考えれば少なくて済む。中古車なら、車両価格もわれわれの味方だ。

英国市場を調べてみると、初期の2017年式から2018年式で、2万5000ポンド(約402万円)というのが相場。走行距離は7万km前後が中心となる。3万ポンド(約483万円)まで奮発すれば、マイナーチェンジ後の2020年式を狙えるようになる。

スタイリングがリフレッシュされただけでなく、サスペンションやブレーキへ手が加えられ、新しいシフトノブが与えられている。改善の幅は小さいものの、確実に良くはなっているから、価格が増すだけの訴求力はある。

2021年式になると3万5000ポンド(約563万円)程は必要。英国の場合、ここには特別仕様のシビック・タイプR スポーツラインが含まれる。大きなリアウイングが省かれ、僅かにソフトな乗り心地のサスペンションが組まれた、大人な「R」だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オリバー・ヤング

    Oliver Young 

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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