中国ブランド小型EV 福島で生産へ 月額9800円「大熊Car」とは? 「日本生産」のねらい、孫社長に訊く
公開 : 2023.03.14 05:45
中国ブランドの小型EVが福島県大熊町の新工場でOEM生産されます。孫社長に「日本生産」のねらいと将来像を取材しました。
もくじ
ー日産サンタナ以来!海外ブランドの国内生産
ーなぜ大熊町? 中国メーカー「日本生産」のワケ
ー軽規格にあわせて設計変更 月額なんと9800円!
ーZ世代に響く? 五菱Air evと宝駿KiWi EVとは
ー福島から世界へ 高齢者にも「わかりやすい」
日産サンタナ以来!海外ブランドの国内生産
日本では1920年代からGMやフォードなど海外ブランドのクルマがKD(=ノックダウン)生産されており、1950年代にはヒルマン・ミンクス(いすゞ)やルノー・4CV(日野)など数々の名車が日本で生産されていた。
しかし、国内自動車産業の急激な進化と発展によって海外 ブランド車を日本で生産するケースは徐々に姿を消し、1984年から1990年まで日産自動車座間工場にてライセンス生産されていた日産サンタナ(フォルクスワーゲン・サンタナ)が最後となった。
それとは逆に、海外で日本車が現地生産されるケースは日本車の海外販売拡大とともに急増。
2021年現在、世界約40か国で生産がおこなわれており、2021年の四輪車海外現地生産台数は1646万台、二輪車は2375万台にも達している。
そして、このたび日産サンタナ以来、30数年ぶりに海外ブランド車が日本国内で生産されることが明らかになった。
その名も「大熊Car」。アパテックモーターズ(本社 東京都品川区/代表取締役 孫峰)が日本で販売を予定している2車種(五菱Air ev/宝駿 KiWi)とともに、3月12日福島県大熊町で開催された「おおくま学園祭」にて初めてお披露目された。
テストコースを含めた工場用地も大熊町内に申請済みで、大熊町在住者を中心に雇用し組み立てがおこなわれるという。
なお、工場が稼働するまでは中国から輸入した車両を大熊Car仕様に仕立てて販売するかたちになる。
孫峰社長は「日本の道路規格にあわせた仕様変更も必要です。また、入門用EVとして使う人の目線にあわせて迷いがなく、使いやすい仕様にして販売する予定です」と話した。
たとえば、ボタンでおこなうシフトチェンジなどもその1つだ。
D/N/Rの大きな3つのボタンを押すことでシフトを切り替えるため、誤使用が起きにくい。
大熊Carの商用車バージョンはAZ-COMネット(中小のトラック運送事業者を中心とする会員制のネットワーク)でもすでに予約が開始されており、1か月9800円という安価なリース料も話題を集め3月上旬から1週間で約500台を受注している。
なぜ大熊町? 中国メーカー「日本生産」のワケ
大熊町は廃炉作業が進む福島第一原発を有する町である。
東日本大震災による原発事故の影響で、長い間全域にわたって避難指示が続いていたが、2019年4月から大熊町の一部エリアで避難指示が解除されはじめ、徐々に町民たちも大熊町に戻りつつある。
とはいえ、2023年3月現在、大熊町に居住する人々は約1000人。震災前1万1000人を超えていた人口の約1割にも満たない。
筆者は昨年11月、アパテックモーターズ孫社長に中国製小型EVの輸入・販売・(近い将来)日本での生産について話を聞いていた。
最後に「将来は福島県内に工場を建てて、中国メーカーを誘致して日本人の丁寧で高品質な作業によって日本の事情に合致した使いやすく安価な小型EVを生産できる体制を整えたい。津波や原発事故の被害を受けた地域の雇用にもつながる」
「仕事があれば若い人たちも大熊町に戻ってくるでしょう。福島の皆さんに役に立つEVを作りたい……」という壮大な話を聞いており、「中国メーカーを日本に誘致? 日本人による作業でEVを生産」という前代未聞のアイデアにただ驚くばかりであった。
それから4か月。2月の終わりに孫社長から大熊Carを生産するための工場用地の申請を始めたという連絡を頂いた。
昨年秋に話を伺ったときには、まだ遠い未来のことだと思っていたのでこんなに早く動き出していたという事には驚いた。と同時に、孫社長の気合と本気を感じたのである。
工場を建設し、稼働するまでは中国からの輸入モデルを日本仕様にして販売するとのことだが、いったい「大熊Car」とはどんなクルマなのだろうか? サイズは? 価格は? 気になるところを孫社長に聞いた。