日本の「軽」は欧州でも通用する? 価格や性能で強み ただし大きな問題も…

公開 : 2023.03.14 19:25

低価格、低排出ガスの軽自動車は、環境規制の厳しい欧州市場で活路を見いだせるかもしれません。ある輸入業者は「需要は高まる一方」と期待感を抱いていますが、「軽」ならではの避けがたい課題も存在します。

欧州市場で「軽」に勝算はあるか

「英国で軽自動車が活躍するタイミングがあるとすれば、それは今だろう」――そう語るのは、英国の代表的な日本車輸入業者であるトルクGT(Torque GT)社だ。

同社によると、「素晴らしい」新型車の登場と、環境問題や環境規制に対する関心の高まりから、こうした小型車の需要が高まっているという。

日本で大人気の軽自動車は、欧州でも通用するのだろうか。
日本で大人気の軽自動車は、欧州でも通用するのだろうか。

軽自動車は、第二次世界大戦後の日本が活気を取り戻すために導入された規格であり、車体サイズと排気量の制限を持つ日本市場向けのクルマである。税金や保険料における優遇、また地域によっては車庫証明が不要であることなど、さまざまなメリットが旺盛な需要を喚起してきた。

金銭的なインセンティブは縮小したが、現在も日本で最も人気のあるクルマの1つである。昨年日本で販売された新車420万台のうち、軽自動車は3分の1以上を占めているのだ。海外の輸入業者は、この膨大な在庫からピックアップすることができる。

冒頭のトルクGTによると、「(英国での)需要は高まる一方」だという。これまでホンダ・ビートホンダS660スズキカプチーノなどのスポーツモデルがカルト的な人気を誇ってきたが、今は幅広い車種が求められている。トヨタのピクシス・メガや、ホンダ・アクティ、スバルサンバーなどがその例だ。

ロンドンではULEZと呼ばれる低排出ガスゾーンが設定されており、区域内を通行するには一定の排出量基準を満たす必要がある。この基準を満たさない車両は「通行料」の支払いを求められる。

ターボGTの担当者は、こうした環境規制に対する懸念は購入者からよく聞かれるものの、軽自動車に対する認知度がまだ低く、主な選択肢にはなってないと言う。しかし、「軽自動車を知る人が増えるにつれて、この状況は変わっていくだろう」と述べている。

特徴活かせる場面も少なくない

また、軽自動車規格のEV(電気自動車)の価格は、欧米メーカーの大型車を下回るものが多く、低排出ガスゾーンの拡張によって需要をうまく取り込むことができるかもしれない。

AUTOCARの兄弟誌であるMove Electricの調査によると、首都ロンドンのULEZが今後(全行政区をカバーするように)拡張されることで、その区域内にいる運転者の39.8%がEVに乗り換える可能性があるという。しかし、多くの自動車ユーザーにとって、「コスト」は依然として大きな問題である。

軽自動車のスポーツモデルには熱狂的なファンも多い。
軽自動車のスポーツモデルには熱狂的なファンも多い。

ルーマニアの自動車メーカー、ダチアが販売する小型EVのスプリングは、手頃な価格設定で人気を集めている。Aセグメントのコンパクトクロスオーバーで、トヨタ・ヤリスよりも小さく、最高速度も100km/hが上限で、1回の充電で最大225kmしか走行できない。

しかし、調査会社ジェイトー・ダイナミクスによると、フランスでは補助金など含めておよそ230万円から購入でき、昨年は欧州全体で5万台近くが売れた。これは、ヒョンデポールスタークプラなど大規模なマーケティングを行った他社モデルよりも多い数だ。

さらに安いモデルで、7695ポンド(約125万円)からというシトロエン・アミもある。しかし、最高速度45km/h、航続距離80km以下、2人乗りという制限があるため、ダチア・スプリングほどのヒットには至っていない。

そのため、性能面ではスプリングを下回るが、極端なアミよりも使い勝手の良いEVとして、軽自動車が求められているのだ。

2022-23年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた日産サクラほど、この需要に応えるのにふさわしいクルマはないだろう。昨年、わずか178万円(補助金を含む発売当時の価格)で発売されたサクラは、4人乗りで航続距離180km(WLTCサイクル)、最高速度130km/hを誇る。

「サクラは欧州でも通用する」とトルクGTは言う。しかし、競争力のある価格で販売するためには、メーカーのバックアップが必要である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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