ゴードン・マレーT50 生産開始 「超軽量」3994cc V12スーパーカー、100台限定

公開 : 2023.03.16 06:05

ゴードン・マレー・オートモーティブは、スーパーカー「T50」の生産を開始したと発表しました。カーボンボディに戦闘機のようなコックピット、コスワース製V12エンジンを搭載した、100台限定の超軽量モデルです。

マクラーレンF1の「論理的後継車」

ゴードン・マレー・オートモーティブは、V12エンジンを搭載するスーパーカー「T50」の生産を開始した。1992年のマクラーレンF1の「論理的後継車」とされている。

新型T50は、軽量のフルカーボンファイバーにV12をミドマウントした3シーターで、マレー氏が半世紀以上にわたるキャリアで50番目の自動車デザインを手掛けたことが車名の由来となった。マレー氏は「最も純粋で、最も軽く、最もドライバーにフォーカスしたスーパーカー」と表現する。

ゴードン・マレーT50
ゴードン・マレーT50    ゴードン・マレー・オートモーティブ

T50には、マレー氏が1978年のF1においてブラバムBT46Bで導入した、地面効果を利用する「ファンカー」技術が採用されている。

最高出力660psのコスワース製自然吸気4.0L V12エンジン(最高回転数1万2100rpm)を搭載し、ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)が全数を製造する。同社は、マレー氏が2017年にT50の計画を明らかにした際に、既存のデザイン事業の傍らに立ち上げた新会社だ。

T50は英ダンスフォールドの生産施設で、わずか100台のみが手作業で組み立てられる。価格はおよそ280万ポンド(約4億5000万円)となる。

生産枠のほとんどは、すでに米国や日本をはじめとする世界の自動車愛好家が購入している。予約金として60万ポンド(約9700万円)、さらに75万ポンド(約1億2000万円)をモデルの詳細が決定した時点で支払い、残りは納車時に精算する。

公道向けの100台の生産が終了した後、F1ドライバーの「ニキ・ラウダ」の名を冠したハードコアなサーキット専用車が25台生産される予定だ。

生産開始にあたり、マレー氏は次のように語っている。「世界で最もドライバーを重視したスーパーカーを目指して開発されたT50を発表したときから、この日を心待ちにしていました」

「T50の設計とエンジニアリングは、初期作業の多くをロックダウン中に完了させるという、信じられないような道のりでした。最初のカスタマーカーのカーボンファイバー製モノコックが組み立てられる様子を、公開から2年半も経たないうちに目の当たりにするのは、魔法のような出来事です」

ファンで強大なダウンフォースを発生

マクラーレンF1と同様、T50では運転席をジェット戦闘機のようにキャビン中央に配置する。サイズはミニ・カントリーマンに近く(ポルシェ911より小さく、アルピーヌ110より軽い)、全幅を1.85m以上に増やさないようデジタルサイドミラーを採用し、狭い街中での操作性を高めている。

スタイリング作業は、マレー氏自身がデザインチームのリーダーとなって、すべて社内で行われた。コンパクトなサイズ、アローヘッドのフロントパネル、ルーフ上のエアスクープ、二面体のドア、サイドウィンドウの「チケットウィンドウ」など、全体的な形状は明らかにF1を参考にしているが、さらに小柄に見せるための工夫がなされている。

ゴードン・マレーT50
ゴードン・マレーT50    ゴードン・マレー・オートモーティブ

優美なフロントエンドとは対照的に、リアエンドには大型のエグゾースト、エンジンルーム冷却メッシュ、巨大なディフューザー、直径400mmのファンなど極端な機能性が詰まっている。このファンは48Vの電気システムで駆動し、ボディ下の空気の流れを加速させることでダウンフォースを発生させる。マレー氏は「市販車のエアロダイナミクスのルールブックを書き換えるもの」と言う。

ファン、ディフューザー、そしてボディ後部のエアロフォイルを組み合わせることで強大なダウンフォースを発生させ、これまでのスーパーカーでは考えられなかったレベルのコーナリンググリップを実現しているという。

エアロダイナミクスモードは6種類あり、そのうち「オート」と「ブレーキ」は車速とドライバー操作に応じて動作する。その他のモードは、コックピットから選択できる。

「ハイダウンフォース」はその名の通りで、「ストリートライン」はファンをフル回転させ、上面と下面のアクティブフラップを格納することでロングテールのような走りを目指す。Vマックスは、V12にクランクマウントされた30psのスタータージェネレーターをフル回転させ、3分間のバーストでパワーを追加する。

240km/hを超えると、ルーフに取り付けられたインダクション・エアスクープにより、エンジンの最大出力は約710psにまで引き上げられる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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