イタリアの「ジオラマ製作コンクール」 企画した人物、想像より深〜いカーガイでした
公開 : 2023.03.18 11:25 更新 : 2023.03.31 01:03
イタリアのジオラマ・コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・イン・ミニアトゥーラ・ロプレスト」。大矢アキオが解説。
テーマは「ミッレミリア」
イタリア北部ブレシアといえば、ヒストリックカー・ラリー「ミッレミリア」のスタート&ゴール地点として長年知られてきた街である。
同市で2023年2月12日から20日まで、ミニチュアカーを用いたジオラマ製作コンクールのエントリー作品が公開された。
正式なイベント名は「第2回コンコルソ・デレガンツァ・イン・ミニアトゥーラ・ロプレスト」で、今回のテーマは「ミッレミリア」である。
ミッレミリアはイタリア語で1000マイルの意味。オリジナル版は速さを競いながらイタリア半島を縦断する公道レースとして1927年に始まった。
以後、数々の伝説的レーシングドライバーが参戦。彼らが駆り、好成績を収めた車の多くは、のちに名車となった。草創期のフェラーリも果敢に参加した。しかし、重大な事故が多発したことから1957年、その歴史に幕を閉じた。
今日催されているミッレミリアは1977年に始まったリバイバル版。オリジナル版に出場した車両、もしくはその同型車のみ参加を許されている。また速さではなく、区間ごとの通過時間の正確さを競うラリー形式が採られている。
今回のコンクールでは、オリジナル時代に各地で展開された風景が、55×55cmのジオラマの中に、既存のモデルカーを活用して再現された。
全12作品で、いくつかの例を挙げれば、1927年の第1回ミッレミリアで難所の1つであるフータ峠に挑む「イソッタ・フラスキーニ」、1931年にルドルフ・カラッチョラをウィナーに導いた「メルセデス・ベンツSSKL」、小さな村を通過する1950年の「フェラーリ166MMスパイダー」、羊に阻まれる1953年大会のフェラーリ「340メキシコ」がある。
さらに、村の坂道でランチア・アプリリアの脇を駆け抜けるスターリング・モスの1955年メルセデス・ベンツ「300SLR」もある。
いっぽうで、狭い商店街で藁束の間をすり抜ける1955年大会の「フィアット1100/103TV」も。当時の参加車がいかに多岐にわたっていたかに思いを馳せることができる。
授賞式は2023年5月16日、同じ会場で開催される。
溢れるイタリア風情
このジオラマ・コンクールは、2022年5月に第1回がミラノで開催された。
ジャッジには、ヴィラ・デステやペブルビーチなど実車のコンクール・デレガンスで審査員を務める人々も参加した。
日本からは日産自動車の元チーフ・クリエイティブ・オフィサーである中村史郎氏、京都コンコルソデレガンツァ創立者の木村英智氏が名を連ねた。
そのときのテーマは「映画」で、1971年「栄光のル・マン」のワンシーンを「ポルシェ917」のスケールモデルと、主演したスティーヴ・マックイーンのフィギュアで再現した作品がウィナーとなった。
第2回で審査員たちが、どのような点を重視するかは不明だ。だがイタリア在住の筆者の目で見ると、いずれの参加作品も秀逸だ。
時代考証はもちろん、民家の漆喰の経年変化、他の欧州諸国のものとは違う煉瓦や石のサイズ、といったイタリアの建物だけが醸し出す、独特の風合いまで緻密に再現されているからである。
とくに町を再現した作品は、1973年の名作映画「フェリーニのアマルコルド」で少年たちが走り去る車を応援しながら、自分もドライバーに憧れる場面を思い出させる。
こうした雰囲気が今後も継続すれば、同じジオラマの出来を競うコンクールでも、イタリアならではのものとして、独自のスタイルを確立できるだろう。
主催者のコッラード・ロプレスト氏についても記しておこう。