無惨に食い散らされたクルマ… 部品不足で急増、白昼堂々の犯行も 英国
公開 : 2023.03.24 20:25
戦争やパンデミックによる供給問題で、英国では自動車部品の盗難が急増しています。中には所有者の勤務先の駐車場で盗まれるケースも。ターゲットは高級車だけでなく、小型車が多いという特徴もあります。
小型車も被害に 部品剥ぎ取りが急増
英国で自動車部品の盗難被害が急増している。これまで高級車の被害が多かったが、現在は小型車の部品が主なターゲットになっている。
パンデミックやウクライナでの戦争による供給問題でスペアパーツが不足しているため、小型車の部品盗難が増加していると、英ウエスト・ミッドランズ警察の車両犯罪対策本部(VCT)の責任者は語る。
今年1月だけでも、バーミンガム地域に駐車していた9台の乗用車(3台のシトロエンC1を含む)が被害に遭い、ボディパネルなどの部品が盗まれた。クリスマス以前の数か月でも、少なくとも3台が狙われている。
被害者の1人、看護師のサマンサ・ローズさんは、1月30日未明、セリーオーク(バーミンガム郊外)の自宅からルノー・クリオのボンネット、ライト、その他複数の部品を持ち去られたという。その夜、同じ地域で他に2台が狙われた。
ローズさんの同僚の多くも被害に遭っているようだ。「白昼堂々、(勤務先の病院の駐車場で)行われているのです。夜になって外に出ると、クルマの部品が剥ぎ取られているんです」とローズさん。
このような盗難事件の急増は、スペアパーツの需要の高まりによってもたらされたと、VCTの刑事責任者であるジム・マンロー氏は言う。「ここ1~2年の間に見られたのは、車両犯罪、特に盗難の増加です。パンデミックとウクライナでの戦争によって引き起こされた、部品不足と供給問題が原因であるとわたし達は考えています」
マンロー氏が率いるVCTは昨年9月に結成され、35人の警官とスタッフを動員している。2月のわずか1週間で、同チームはバーミンガム地域全体で50人以上の容疑者を逮捕した。
自動車犯罪は「需要」があるから起きる
部品盗難はバーミンガム地域で最も多く発生しているが、大手保険会社LVゼネラルによると、同様の事件は英国全土で増加傾向にあるという。これに伴い、自動車保険の請求が増加しているのだ。
LVゼネラルによると、2017年以降、ステアリングホイールの盗難は133%増加し、エアバッグ、シフトレバー、ダッシュボードの盗難も倍増しているという。ステアリングホイールとエアバッグの平均保険請求額は約7000ポンド(約110万円)。最も高額なのは、ダッシュボード全体が盗まれ、償却を余儀なくされた車両の4万1000ポンド(約650万円)である。
同社の調べでは、窃盗団は盗んだ部品を整備工場に売り、整備工場は新品よりも大幅に安い値段で顧客に提供しているという。
LVゼネラルの保険引受け責任者であるアレックス・ハモンド=チェンバー=ボルグニス氏は次のように述べている。
「小遣い稼ぎに熱心な窃盗団によるスペアパーツの盗難が増加しています。これは、世界的なサプライチェーンの混乱により、自動車部品の需要が非常に高まっていることも要因となっています」
自動車部品の盗難は、以前も注目を集めたことがある。2013年にヴォグゾール・コルサが集中的に狙われ、当時の警察は窃盗団を「コルサ・カニバル」と呼び、英国全土で話題になった。部品を剥ぎ取られた無惨な姿が、人食い部族(カニバル)に食い散らされたように見えたのだろう。
警察は、事故後に安い部品を必要とする若くて経験の浅いドライバーによって、部品の需要がもたらされていると考えていた。この現象は2018年夏まで沈静化していたが、ソリハルで部品盗難が相次いだことで再び注目されるようになった。
ある週末、窃盗団は4台のコルサからボンネット、グリル、ヘッドライトを剥ぎ取り、同期間に報告された被害件数は11件に上った。