アストン マーティンDBX707試乗 高次元の調律 研ぎ澄まされた707ps まるでDBXの「GT3」化

公開 : 2023.04.02 05:45

707psを発揮するアストン マーティンDBX707に試乗。軽快な身のこなしができるGT3のようなマシンと筆者は評価します。

わずか2年で登場 DBX707とは?

アストン マーティン初のSUVであるDBX。

そのハイパワーモデルであるDBX707のステアリングを握ることができた。

アストン マーティンDBX707は、DBXのデビューからわずか2年で登場したハイパフォーマンスモデル。
アストン マーティンDBX707は、DBXのデビューからわずか2年で登場したハイパフォーマンスモデル。    アストン マーティン

英国編集部のリチャード・レーンがこのクルマをテストドライブした際「現在英国で販売されている自動車のベスト」と言い切っていた。また彼は「DBXをGT3化したような」とも形容していた。

豪奢なクロスオーバーSUVをそこまで研ぎ澄ますことができるのだろうか? 期待せずにはいられない。

車名に含まれる707という数字はメルセデスAMGから供給されているV8ユニットの最高出力を示している。

以前のスタンダード版のパワーは550psだったので、実に157psものパワーアップを遂げているのだ。

普通、最高出力が3割近くも増すと、それを受け止める隅々までアップデートが必要になるもの。

そんな視点でDBX707を観察してみると、ギアボックスがトルコンの8速ATから湿式多板の9速デュアルクラッチ式に変わっているし、デフも容量が大きなEデフへと変更されている。

もちろんホイールのサイズは同一だが、ドライブシャフトも強化されているので、パワートレインや駆動系はほぼすべて刷新されていることになる。

デビューからわずか2年ほどでこれほどのハイパフォーマンス版がデビューするのはめずらしい。

だがそこは超高級ブランドのアストンなので、必ずしも世の中のごく一般的な時間の流れと歩調が合うわけではないのだろう。

驚異の707ps アストンならアリ?

DBX707の外観で目立つのは下方向に拡大されたグリルだ。その下縁の黒い部分もエアインテーク化されている。

昨今は空力を重んじ、ボディの表面に無駄な穴は開けない。つまりDBX707は本気で冷却する必要があるのだ。

アストン マーティンDBX707のシートはラグジュアリーだがけっこうタイト。加速した瞬間にその理由がわかった。
アストン マーティンDBX707のシートはラグジュアリーだがけっこうタイト。加速した瞬間にその理由がわかった。    アストン マーティン

23インチ、リア325幅のタイヤに呆気にとられ、こんなタイヤを履きこなせるクルマなんてある? とも感じたのだが、まずはドライブしてみよう。

ちなみに今回は雪に降られてサーキット試乗ができなかったため、試乗は別の日に都内でおこなっている。

職人仕事を感じさせるシートは見た目以上に腰まわりに吸い付く感じ。ラグジュアリーだがけっこうタイトなのだ。

だが加速した瞬間、なるほどこれだけのホールドが必要なのだと思い知らされた。

本当に707psあるかどうかは別として、DBX707の加速はスタンダードのそれとはまるで別物だ。

スロットルの踏みはじめから躊躇なく鋭くて図太い加速が襲ってくる。

SUVにこんな加速性能がいるのだろうか? いるとしたらそれはブランドの問題だろう。

例えばランボとかフェラーリとか。イギリス車でいえばアストン以外には似つかわしくない。

それ以上に驚くべきはシャシーの側だった。フル加速でもリアを少しだけ沈め、こともなげに加速して見せる。性能的に尖った部分をすべてキレイに面取りしたような感覚。

そういえばこのバランスは、以前ドライブしたスタンダードのDBXと同じだったりする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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