「名機」ベントレーW12エンジン ルーツは1990年代フォルクスワーゲンVR6に
公開 : 2023.04.05 06:25
ベントレーの伝統的なW12エンジンが生産を終了します。12気筒のエモーションとコンパクトなサイズを両立する「W型」の構成は、フォルクスワーゲンのVR6エンジンの設計をベースとしています。
ユニークなW型配置 ベースはフォルクスワーゲンVR6
英国の高級車ブランド、ベントレーが伝統的なW12エンジンの生産を終了するというニュースは必然的なものである。ベントレーは今後10年のうちに完全電動化する予定であり、好むと好まざるとにかかわらず、6.0L W型12気筒ガソリンエンジンの時代は終わりを告げたのだ。
しかし、W12はもはや傑作の域に達している。20年以上前にフォルクスワーゲンのコンセプトカー「W12」シリーズで発表されたエンジンで、これまでに生産された台数が10万5000台というのは、決して悪い数字ではないだろう。
W12という呼称は、6気筒の2バンクではなく、3気筒の4バンクを意味するという、いささか複雑なものとなっている。実際、基本設計は1991年のフォルクスワーゲンVR6エンジンを参考にしており、その構成は同じように、いやそれ以上に独創的である。
エンジンのシリンダー(気筒)は直線的に配置される「直列」がほとんどだが、エンジンルームのスペースが限られている場合は「V」字型となるのが一般的だ。6気筒の前輪駆動車のほとんどはV型を採用している。
V6エンジンは通常、2つのシリンダーバンクを持ち、それぞれに3本ずつシリンダーが並べられている。シリンダーバンク間の角度は60度が一般的で、2つのシリンダーヘッド、最大4本のカムシャフト、2つのエグゾーストマニホールドがある。吸気口は通常、スロットルボディを共有する「V」の中央にある。
どんなものにも言えることだが、V6にはメリットとデメリットがある。エンジンユニットは直列6気筒よりずっと短いので、縦置きと横置きの両方でメリットがあるが、幅は広くなってしまう。また、直列6気筒のような自然で完璧なバランスに欠け、排気系のパッケージングも直列より複雑だ。
フォルクスワーゲンのVR6は、直列6気筒とV6を掛け合わせたもので、直列のサイズの利点を生かしながら、弱点を克服している。
シリンダーブロックは1つだが、シリンダーが1つの中心線上に配置されるのではなく、平行する2つの中心線上に交互にずらして配置され、わずかに重なり合うようになっている。
結果として、直6よりも短く、V6よりも狭い。また、シリンダーヘッドとエグゾーストマニホールドは1つで、点火順序は従来の直6と同じである。
このように考えると、W12がどのように構成されるかも容易に想像がつくだろう。各バンクの6気筒は15度ずらして配置され、さらに2つのバンクを72度傾けている。
この巧妙なVR6のレガシーによって、従来のシリンダー配列に比べて24%も短いエンジンが誕生したのだ。
ベントレーの最新モデル、バトゥールに搭載予定のW12は、わずか18台しか製造されない。改良された吸気システム、新設計のターボチャージャー・コンプレッサー、圧縮吸気から35%多く熱を奪う大型インタークーラー、エンジンキャリブレーションなどにより、最高出力740psと最大トルク102kg-mを発生するアップグレード型である。