離島で生き延びるクラシック フォード・カプリ MGBロードスター フィアット500ほか 前編
公開 : 2023.04.23 07:05
ジブラルタル海峡の遥か西、ポルトガル領マデイラ島で生き延びるクラシックカー。英国編集部が、個性的な数々をご紹介します。
もくじ
ー古き良き南欧の空気が残るマデイラ島
ーフォード・カプリ 3000GT(1973年)
ーMGB ロードスター(1965年)/MGA 1600 クーペ(1960年)
ーオースチン・テン・サルーンGSI(1946年) /シンガー・ヴォーグ(1966年)
ーフィアット1500(1966年)
ーフィアット・ヌォーヴァ500(1957年)
ーオースチンA55 ケンブリッジ(1960年)
古き良き南欧の空気が残るマデイラ島
アフリカ大陸から650km以上離れた、大西洋に浮かぶポルトガル領のマデイラ島。起伏に富んだ小さな陸地には、古き良き南欧の空気が残る。街を歩けば、懐かしいクラシックカーとも沢山出会える。
ブーゲンビリアやハイビスカスなど、南国らしい花が咲き誇る急斜面を、年代物のクルマがゆっくり登っていく。力を振り絞って。ちなみに面積は741平方kmで、奄美大島と同じくらいだ。
道路の整備が進み、トンネルが掘られ、島の反対側まで速く向かうことも可能になった。だが、うねうねと坂が続く旧道も現役。特に島の南部、フンシャルの山際には世界有数の急勾配がある。場所によっては、斜度は45%にも達するという。
殆ど断崖絶壁のように見える坂道だが、頑張って登る価値はある。壮大な絶景を拝むことができるから。
輸送費が高い離島では、クルマは徹底的に走り込まれ、生涯を終えることが珍しくない。「自分のクルマを家族のように大切にする人が多いですよ」。と話すのは、マデイラ島の観光文化担当長官を務めるエドゥアルド・ジェズス氏だ。
約2000台のクラシックカーが生き抜いており、レストアにも熱心らしい。「費やした金額が、価値に反映するとは限りません。しかし、毎年恒例のレストア・コンテストを通じて、かつての輝きを取り戻したいという動機を所有者へ与えています」
島には複数のオーナーズクラブも存在する。積極的にイベントが開かれているそうだ。
「大西洋の真珠」と呼ばれる美しい島に残る、現役で走り続けるクラシックカーたちを今回はご紹介しよう。
協力:ビジット・マデイラ、ヴィダマール・リゾートホテル、ブリストル空港駐車場
フォード・カプリ 3000GT(1973年)
オーナー:エドゥアルド・ボナル・シルバ氏
旅行代理店を営むエドゥアルドは、休日のドライブが何よりの楽しみだという根っからのマニア。1974年式ミニ・クラブマン 1275GTや、1974年式ダットサン1600 SSS、1972年式マツダRX-2など、合計8台のクラシックカーを所有しているそうだ。
そんな彼の1番のお気に入りが、1973年式フォード・カプリ 3000GT。鮮やかなペッパー・グリーンのボディに、ブラックのビニール・ルーフが決まっている。
ドライなサウンドを響かせるV6エンジンは、多くの視線を集めるという。パワフルで、急な坂も簡単に登り切ると誇らしげだ。「カプリは、ヨーロッパのマスタングと呼ばれていましたからね」
「これは、夫を失った婦人が15年間も眠らせていたクルマでした。彼女から買い取るまで、4年間も説得を続けたんですよ。クラシックカーは自分にとっての生きがい。多くの島の人と同様にね」。とエドゥアルドが笑った。