新参でも見過ごせない内容 BYDシールへ試乗 ツインモーターは530psで519km

公開 : 2023.04.28 08:25  更新 : 2023.05.01 07:56

欧州車じみたスタイリングをまとう、中型サルーンのシール。既存のライバルへ挑むのに不足ない内容だと、英国編集部は評価します。

欧州での販売が本格的にスタート

BYDによるバッテリーEV(BEV)の販売が、欧州でも本格的にスタートする。いずれのモデルもブランドイメージを形成するうえで重要な位置づけにあるが、今回試乗した中型サルーンのシールは、特に背負うものが大きいといえる。

もっとも、欧州や日本のユーザーにとっては目新しい自動車メーカーだが、世界規模で見れば既に沢山のBYDユーザーがいる。中国を代表する規模の企業であり、60万人の雇用を抱え、拠点は6つの大陸に広がっている。

BYDシール AWD 82kWh(中国仕様)
BYDシール AWD 82kWh(中国仕様)

乗用車だけでなく、ソーラーパネルや電車なども製造し、既に電動バスは日本でも走り始めている。携帯電話だけを見れば、世界中の機種の20%にBYDのバッテリーが使われているという。新技術のリン酸鉄リチウム・バッテリーも提供している。

事業展開は幅広く、タッチモニターやシートの生地なども、自社で開発・製造を行っている。BYDとは、 Build Your Dreams(あなたの夢を叶える)の略。着実に同社の夢は現実になっているようだ。

果たして、シールの完成度は高い。ボディサイズは全長4800mm、全幅1875mm、全高1460mmと、フォルクスワーゲンパサートアルテオンなどと同等。スタイリングは、見る角度ではポルシェタイカンに似ているかもしれない。

ツインモーター版の最高出力は530ps

シールがベースとする基礎骨格は、e-プラットフォーム3.0と呼ばれる、自社開発のもの。駆動用モーターは、リアに1基載った後輪駆動で312psの仕様と、前後に2基載った四輪駆動で530psの2種類が設定される。

駆動用バッテリーは共通で82kWh。航続距離は、WLTP値で569kmと519kmがうたわれる。英国価格は未定だが、シングルモーターで4万1000ポンド(約660万円)、ツインモーターで4万7000ポンド(約756万円)からが予想される。

BYDシール AWD 82kWh(中国仕様)
BYDシール AWD 82kWh(中国仕様)

英国での販売は2023年秋からの予定だが、今回、短時間試乗できたのは中国仕様。僅かな手直しが加えられ、導入されるようだ。

ツインモーター版の最高出力は530psあるだけあって、カタログ値0-100km/h加速3.8秒という、笑ってしまうほどの加速力を披露する。それだけでなく、アクセルペダルの角度に対する反応が洗練されていて、スピードやパワーを調整しやすい。

スポーツ・モードを選択すると、ステアリングホイールの重み付けが増加。軽くないボディを、豪快に旋回させることもできる。姿勢制御は引き締まり、グリップ力も充分。操舵には充足感が伴う。

ただし、シャシーから感じ取れる特徴のようなものは薄い。運転する楽しさでいえば、BMW i4ポールスター2には届いていない。とはいえ、シールも充分に磨き込まれていて能力は高い。

シングルモーター版は車重が少し軽いぶん、反応が快活だった。ドライビング体験の中心に圧倒的な加速力がある、ツインモーター版とは印象が異なっていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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