フランスの景色の象徴に シトロエン2CV 375ccで9ps 1948年のゲームチェンジャー(1)
公開 : 2023.04.30 07:05
戦後の開放的な雰囲気のなか、ゲームチェンジャーといえる傑作モデルが誕生した1948年。その最たる6台を、英国編集部がご紹介します。
もくじ
ーゲームチェンジャーとして輝かしい6台
ー柔軟なサスペンションが特徴のシトロエン2CV
ー徹底的に合理的でありながら天才的
ーコツが必要な遠心クラッチとシフトレバー
ーフランスの景色の象徴になった
ーシトロエン2CV(1948〜1990年/欧州仕様)のスペック
ゲームチェンジャーとして輝かしい6台
いまから75年前の人々も、前進あるのみだった。第二次大戦が集結し、多くの着想や技術が解き放たれ、新時代を切り拓く準備は整っていた。戦後の自動車産業は、大きな成長が約束されていたといっていい。
各国のメーカーが準備を整えた1948年、モーターショーが華々しくリスタート。次々に発表される新しいクルマへ、多くの人が目を輝かせた。
ロンドンでは、市民の足といえるモーリス・マイナーと、スポーツカーのジャガーXK120がお披露目。パリではシトロエン2CVが、アムステルダムではランドローバー・シリーズ1のオリジナルが、期待を膨らませた。
戦いに敗れたイタリアからはフェラーリ166が、ドイツからはポルシェ356が姿を表した。概念を覆すようなニューモデルたちは、その後の技術者やデザイナーへ大きな影響を与えることになった。
今回、英国編集部では1948年から75年が経過した節目を記念し、ゲームチェンジャーとして輝かしい6台をグッドウッド・サーキットに揃えてみた。改めて、いずれも偉大なモデルだと実感するばかりだ。
柔軟なサスペンションが特徴のシトロエン2CV
禁欲的という言葉は、楽しさと結びつきにくい。しかし、必要なものをストイックに追求したシトロエン2CVは、1948年に誕生した楽しさ溢れる乗用車だった。特に最初期のリップル・ボンネットなら、純粋にその魅力を味わえる。
9psを発揮する2気筒エンジンを搭載した2CVは、1948年に戦後の新しいシトロエンとしてデビューした。だが、開発は戦前からスタートしていた。TPVと呼ばれる小型車として、最初のプロトタイプは1937年に作られている。
エンジンは水冷式から空冷式へ、ボディはアルミニウムからスチールへ変更を受けていたが、モダンなデザインのお陰で、第二次大戦を経ても古びて見えることはなかった。当時のシトロエンと共有する部品は、1つもなかった。
マスコミは冷ややかに2CVを報道したが、市民の反応は熱かった。シトロエンには、対応しきれないほどの注文が集まったという。当時のフランスでは、安価な移動手段が切望されていた。戦前のクルマは戦いで破壊され、馬車が市街地を走っていたのだ。
2CVのことは、クルマ好きならある程度はご存知だろう。農民の移動手段として畑でも走れ、壊滅的な被害を受けた道路網にも対応できる、柔軟なサスペンションが特徴の1つだ。
価格と維持費の安さも重視されていた。それでも、素朴な喜びが満ちている。ドアを固定するのは、開口部へ引っかかる簡素なスライドバー。デッキチェア風にパイプで組まれたシートには、伸縮性のあるクロスの上に薄いクッションが敷かれている。