内装に牛16頭分のレザー ベントレー・ブルックランズ 英国版中古車ガイド 生産数は約400台

公開 : 2023.05.09 08:25

アグレッシブさを秘めたラグジュアリー・クーペ、ブルックランズ。往年のベントレーの魅力を、英国編集部が振り返ります。

約400台しか注文されなかった最上級クーペ

2008年にベントレーのフラッグシップとして登場したラグジュアリー・クーペ、2代目ブルックランズ。世界情勢的には、望ましいタイミングとはいえなかった。

各国が金融危機へ見舞われるなか、英国での価格は23万ポンドから34万3000ポンド。当初は550台が製造される予定だったが、2011年までに約400台しか注文は寄せられなかった。そのうちの97台は、グレートブリテン島に住む富裕層が占めた。

ベントレー・ブルックランズ(2008〜2011年/英国仕様)
ベントレー・ブルックランズ(2008〜2011年/英国仕様)

スタイリングは、兄弟モデルとして2006年に登場していたコンバーチブル、アズールと共有している。ブルックランズの長くカーブを描くルーフは、優雅なシルエットを演出。巨大なブレーキディスクを覆う、20インチホイールも壮観だった。

アズールと比較し、ルーフが追加されたことでボディ剛性は向上。1930年代のベントレー・スピリットを宿したような高い動力性能に、当時の自動車ジャーナリストは感銘を受けている。

6.75Lという大排気量のV8ガソリンエンジンには、2基のターボチャージャーが組み合わされ、最高出力537psを発揮。最大トルクは106.8kg-mと3桁に届いていた。ちなみにこのV8エンジンの起源を辿ると、1959年にまで遡る。

最高速度は296km/hに達し、0-97km/h加速を5.0秒でこなした。48km/hから80km/hまでの中間加速は1.7秒という鋭さで、ブルックランズの現実世界でのパフォーマンスは揺るぎないものといえた。

インテリアには牛16頭分のレザーを使用

ハンサムなスタイリングや怒涛の走りもさることながら、インテリアも特筆すべきラグジュアリーさ。オーナーを魅了する雰囲気をたたえている。

1台の内装に用いられたレザーは、牛16頭分。職人がきれいに型を抜き、丁寧に縫製して仕上げている。深い光沢を放つウッドパネルは分厚く、重さはオンスではなくポンドで計られていた。カーペットの毛足が長いことは、いうまでもないだろう。

ベントレー・ブルックランズ(2008〜2011年/英国仕様)
ベントレー・ブルックランズ(2008〜2011年/英国仕様)

ハイエンドなクーペは、実用性も犠牲にしていなかった。全長は5411mmと長く、都市部での取り回しに気を使うことは間違いないが、そのサイズを活かしリアシート側の空間は広大。大人4名が快適に移動できるベントレーだ。

荷室容量は374Lと充分。定員分の手荷物なら、問題なく運べる。

オプションは、ふんだんに用意されていた。2250ポンド支払えばボンネットの先端にフライングBマスコットを飾れた。2万ポンドを上乗せすれば、カーボンブレーキにアップグレードも可能だった。もし興味をお持ちなら、装備内容をよく確かめたい。

中古車として、ブルックランズで現実的とはいえないのは燃費だろう。市街地を流すと、3.5km/L前後まで落ち込む。メンテナンス費用にも充分備えたい。タイヤはそこまで高くないとしても。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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