EVのコスト削減を実現する日産「X-in-1」技術 鍵は小型化と部品共有

公開 : 2023.05.02 18:25

日産は、2026年までにEVとICE車のコストを同等化するため、「X-in-1」と呼ばれるパワートレイン技術を導入します。モーターの小型化や部品共有によって効率を高め、魅力的な体験を提供するとしています。

EVコスト、エンジン車と同等に

EV(電気自動車)の販売台数は増加傾向にあるが、ほとんどの場合、ICE(内燃エンジン)車との価格差は歴然としている。

これまでのところ、一部のEVメーカーはブランド力やデザインの良さに頼ってきた。しかし、自動車業界全体でICE車とのコストパリティ(価格の同等化)を実現しようと懸命に努力した形跡はほとんど見られない。

日産の「X-in-1」は、2026年までにパワートレインコストの30%削減を目指す。
日産の「X-in-1」は、2026年までにパワートレインコストの30%削減を目指す。    日産

だが、ルノーがCMF-Bプラットフォームを導入したように、少しずつ状況は変わりつつあるようだ。このプラットフォームは、次期ルノー5のベースとなるもので、現行のゾエ(欧州向けの小型EV)よりも製造コストが30%安いという特徴がある。現在、9台のプロトタイプによるテストが行われている。

ルノーだけではない。日産は3月、「X-in-1」という新しいパワートレイン技術により、2026年までに2019年比でパワートレインコストを30%削減すると発表した。また、ハイブリッドのeパワー車と従来のICE車の価格も、同時期までに同等になる見込みだ。EVについては、固体電池技術の導入も手伝って、「いずれ」同等になるという。

X-in-1という名称は、日産のeパワー車(5-in-1)とEV(3-in-1)に適用される。初代リーフに比べ、モーターとインバーターを一体化し、インバーター内の電子部品を直接冷却することで、パッケージを25%縮小している。

eパワー車が発売されたのは2016年(2代目ノートに初搭載)だが、リーフベースのプロトタイプが最初に走ったのは2010年のことだ。以来、パワートレインは着実に改良を重ねてきた。

3-in-1では、EV用モーター、インバーター、減速機を1つのモジュールにまとめ、3つのコンポーネントをさらに10%コンパクト化した。5-in-1も同様で、この3つに発電機と増速機を組み合わせてモジュール化することで、さらに10%の小型化を実現する。モーターの部品共有もコスト削減の重要な要素だ。

マグネットに使用するレアアース(希土類)素材は1%未満に抑えられている。これは、モーターのローター表面の形状を変更し、熱損失を低減することで達成した。従来は、ローター周囲に配置された磁石を分離することで熱の発生を抑えていた。しかし、今回の設計では磁石を密に配置することで、レアアース(希土類)素材の削減を可能にした。

また、インバーターは、バッテリーの直流をモーターの交流に変換するだけでなく、パワートレインのあらゆる制御電子回路の役割を担っている。

例えば、第2世代のeパワー車用インバーターは、半導体を第1世代より40%小型化し、内部のワイヤーハーネスを廃止して、回路基板などの部品を直接接合している。X-in-1では、シリコンカーバイドチップの導入により、電力密度はさらに高まる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    英国編集部テクニカル・ディレクター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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