アルピーヌ初の市販EV、2024年日本発売へ 「A290」コンセプト公開 小型の高性能ハッチバック

公開 : 2023.05.10 20:45

アルピーヌは2024年に発売予定の新型EV「A290」のコンセプトモデルとして「A290ベータ」を公開しました。ルノー5をベースとする電動ホットハッチで、走行性能に重点を置いています。

初のEVホットハッチ 2024年発売予定

アルピーヌは、2024年に発売予定の新型EVを予告するコンセプトモデル「A290ベータ」を公開した。

高性能のEVハッチバックで、コンセプトモデルではFIA公認のレーシングシャシーを採用し、フロントアクスルに2基のモーターを搭載しているが、2024年の市販車ではルノー5と同じCMF-BEVプラットフォームを使用する予定だ。モーターもシングルとなる見込み。

アルピーヌA290ベータ・コンセプト
アルピーヌA290ベータ・コンセプト    アルピーヌ

アルピーヌはこのプラットフォームを改良し、低速域での遊び心と加速時の安定性を確保したという。デザインディレクターのアントニー・ヴィラン氏は、「重要なのは軽快さ」とし、「EVではバッテリーが重いことは知っていますが、軽快さと純粋な喜びという、まったく同じ運転哲学を見出したいと考えています」と語る。

そのため、ベースとなるルノー5のサスペンションに油圧式バンプストップを追加し、乗り心地を改善するとともにハンドリングを強化した。また、フロントモーターのトルクベクタリングは機械式ディファレンシャルを模して設計されており、ブレーキング時の安定性とコーナーからの加速時のトラクションを向上させるという。

A290ベータは全長4.05m、全幅1.85mと、比較的ショート&ワイドなプロポーションを持つ。これが、本質的な安定性と俊敏性を生み出すと、プロダクト責任者のチャーリー・ビアドー氏は言う。

また、既存のA110と同じ4ピストンブレーキが採用されており、回生ブレーキと自然に調和するようにチューニングされる。

ビアドー氏は、回生ブレーキの強さを段階的に複数設定し、ブレーキペダルの「透明感」を目指すと説明した。モーターの制動力を最大限に活用し、アクセルペダルのみで運転できる「ワンペダルドライブモード」なども盛り込む。

トルクで軽快さを表現 EVならではの走り

市販車のA290の仕様は不明だが、バッテリーを搭載するため、A110よりも大幅に重くなるだろう。ビアドー氏は「現在の技術に対応する新しいバランスを見つける」とし、「アルピーヌの伝統は、軽快さと独特の乗り心地です。EVではトルクがはるかに大きく、重量やその他の機能を追加してもいい。つまり、軽快さは数字に表れるものではなく、動く重量物という感覚に表れるものなのです」と述べた。

また、「通常、内燃エンジンのホットハッチでは、フロントにすべての重量がかかっています。リアに荷重をかけると、ブレーキング時に安定性が増すので、サスペンションなどでいろいろな遊びができるようになる」とも述べている。

アルピーヌA290ベータ・コンセプト
アルピーヌA290ベータ・コンセプト    アルピーヌ

エンジニアリングの責任者であるロバート・ボネット氏が明かしたところによると、モーターは2種類用意されるようだ。1つは、ルノー・メガーヌEテック・エレクトリックの最高出力218psのユニットを短縮したもの。もう1つは、ルノー、ヴァレオ、ヴァレオ・シーメンスによって開発された272psのユニットで、2027年の生産開始が予定されている。

バッテリーは1種類のみで、容量と航続距離はルノー・ゾエの52kWhと380kmに近いものと予想されている。ルノーは以前、新世代のバッテリーパックは4つのモジュールに分割され、ゾエの既存ユニットよりも密度が高く、その結果15kg軽量化されていると発表している。

インテリアデザイナーのジョシュア・リーア氏によれば、市販車のインテリアはコンセプトモデルと「1%」程度しか似ていないという。ドライバーを中心に据えたコンセプトの3人乗りのコックピットは、走りに重点を置くというアルピーヌの意思表示と言える。

タッチスクリーンを排除し、ルーフとステアリングホイールに取り付けられたボタンでさまざまな操作を行う。速度や航続距離といった重要な情報は、ステアリングホイールの上に設置された小型のヘッドアップディスプレイに表示される。

市販車に反映されそうな唯一の機能は、F1にヒントを得た「OV」ボタンで、10秒間のパワーブーストが可能だ。詳細は明かされていないが、ビアドー氏はパワーブーストに短いクールダウン時間を必要とするが、これはまだ調整中であると述べた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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