ベントレーとの不思議な共通点 アルピーヌA110 長期テスト(2) サビやすいブレーキディスク
公開 : 2023.05.20 09:45 更新 : 2023.06.15 13:54
ベスト・ドライバーズカーの1台、A110。それを普段使いすることとは、どんな体験なのか。英国編集部が長期テストで確かめます。
もくじ
ー積算5563km ゴードン・マレーもオーナー
ー積算7760km 腐食が激しいブレーキディスク
ー積算8595km 至極心地よく運転を楽しめる
ー絶滅危惧種に数えられる2台
ー素早く滑らかな6速MTを望んでしまう
ーステアリングの振動は突然解消
ーテストデータ
積算5563km ゴードン・マレーもオーナー
アルピーヌのオーナーズ・ミーティング以外の場所で、A110が2台並ぶことは英国でもかなり稀。マクラーレンF1のデザインでも有名な、ゴードン・マレー氏の自宅へ訪れた時、彼がオーナーだということを初めて知った。
2017年のスイス・ジュネーブ・モーターショーで、最大の注目モデルとして彼は迷わずA110を指名していたから、驚く結果ではないのかもしれない。自らのお金で、その仕上がりを確かめることにしたようだ。
積算7760km 腐食が激しいブレーキディスク
ブレーキディスクの素材構成が何なのかは不明だが、屋外に1週間止めていただけで、ブレーキパッドと固着する勢いで腐食してしまった。
タイヤがグリップする舗装路では、充分な力がかかり問題なく発進できた。しかし滑りやすい路面の場合は引っかかってしまい、3本のタイヤの回転がしばらく不安定に。快適な走行へ支障が出てしまう。
積算8595km 至極心地よく運転を楽しめる
先日の長期休暇で、筆者は久しぶりに移動手段へ悩むことになった。当然その選択肢の1つには、小さく低く軽い、アルピーヌA110も含まれていた。
もう1台は、フルオプション状態のベントレー・フライングスパー・マリナー。大きく重く、背も高い。様々な装備が満載され、A110より20万ポンド(約3220万円)もお高い。もちろん、メーカーからお借りしているクルマだけれど。
2台を並べると、タイヤが4本付いていることくらいしか共通点は感じられない。ところが、しばらく時間をともにすると、想像以上に通じる部分があることへ驚いてしまう。
まず、どちらも至極心地よく運転を楽しめる。英国郊外の凹凸だらけの道でも、適切なドライブモードを選んでいれば、ソフトなスプリングが快適な乗り心地を保ってくれる。A110より2倍以上の車重を持つ、フライングスパー・マリナーであっても。
巨体を制御するため、トリプルチャンバーのエアスプリングと電子制御のアダプティブダンパー、アクティブ・アンチロールバーが装備されているが、目指す目標は同じといえる。路面の不整を吸収し、安定性や快適性を損なうことなく、路面へしなやかに追従する。
絶滅危惧種に数えられる2台
自動車を取り巻く環境の変化で、絶滅危惧種に数えられるという点でも共通している。この希少性に、筆者は強く惹かれる。
最近は、どんなシーンにも当たり障りなく対応できる、クロスオーバーへ人気が集まっていることはご存知の通り。少し高級で、少し悪路が得意で、少しスポーティ。見た目も、SUVとクーペの中間のようなシルエットが英国では支持されている。
確かに、満遍なくそれなりの能力を備えている。とはいえ、実際には完全に得意とするシーンがないともいえる。サイズは必要以上に大きくなり、車重も増え、運転の楽しさも高いとはいいにくい。
フライングスパー・マリナーやA110は、そんな中途半端な道を選んでいない。フィアット・パンダやケータハム・セブン、フェラーリF40、筆者の愛車であるシトロエン2CVにも同様なことが当てはまる。少し前のクルマへ、魅力を感じる理由でもあるだろう。
そのいずれもが、自らの目的を明確に定め、カタチとして体現されている。ある目的を、見事にこなしてみせる。フライングスパー・マリナーの場合は、大陸を横断するようなグランドツーリング。A110の場合は、郊外の道でのドライビング・プレジャーだ。