自然光に近いLED照明 ボルボ、室内灯(ルームランプ)に採用 「気分を高める」光とは
公開 : 2023.05.17 06:05
ボルボは太陽の光を模した新しい室内灯をEX90に採用しました。最新のLED技術を駆使し、自然に近い光を再現することで人に快感を与えると言われています。一体どのような技術なのか、概要を紹介します。
人に快感を与える自然な光
ボルボは、フラッグシップモデルのEX90の室内灯に「太陽光に近い」照明を採用したと発表している。そこで今回は、新しいLED技術の可能性に注目したい。
かつては、小さな豆電球が一般的で、暗闇の中で車内を大まかに照らすことができればそれで十分だった。しかし今、デザイナーたちは、はるかに高性能な最新のLED技術を利用して、(照明業界で流行りの言葉を使えば)「人間中心の体験」を提供しようとしている。
それはどんなものなのだろう? ボルボEX90の場合、韓国の照明器具メーカーであるソウル半導体(Seoul Semiconductor)製の「サインライクLED」を72個使用している。単なる視認性だけにこだわらず、乗員の気分を高める明度や色調を目指したものだ。
ボルボのデザインチームは、暗く憂鬱な朝、EX90のオーナーに人工的な陽光をもたらしたい、と語っている。昔の白熱電球はただ光を出すだけであったが、最近のLED技術はちらつき(フリッカー)現象を防ぎつつ、より幅広い色温度で利用できる。
色温度は新しい概念ではなく、特に人工光で対象物を撮影する際、カメラを扱う人なら誰でも意識することだろう。簡単に言うと、色温度は光源の冷たさ(青)と暖かさ(黄)に関係する。
色温度はケルビン(K)という単位で表されるため、数値による客観的な測定が可能だ。数字が小さいほど暖色系なので、2500Kはとても暖かみがあり、6500Kになると青みが増して昼光色と呼ばれるようになる。
ソウル半導体のサンライクLEDは、「ナチュラル・スペクトル・テクノロジー」と呼ばれる技術で、ブルーライトの量を減らし、自然な太陽光と同じスペクトル(分光分布)を実現する。自然光は、約380nm(ナノメートル)の最も短い波長(紫)から約775nmの赤まで、可視光線の全領域を均等に分布させている。
しかし、「昼光色」と銘打った旧来の照明技術では、波長の長い赤色光の量が少なく、本物の昼光色とは異なるスペクトルを持つことも少なくない。
なぜ、このようなことが重要なのだろうか? デザインの観点からは、素材の色の感じ方に影響する。そのため、ショールームで色見本を確認する際には、窓際に近寄って正確な色味を確かめないといけない。光源が素材や生地の色をどれほど正確に表現できるか(演色性)は、CRI(演色評価数)と呼ばれる基準で客観的に判断できる。
つまり、デザイナーは、自然なスペクトルを実現することで、太陽光と同じようにセロトニン(快感ホルモンとも呼ばれる神経伝達物質)の分泌を促進し、幸福感を得られると考えているのだ。
自然光をイメージした最新のLED技術は、すでに自然光が重要視されるさまざまな建築物で採用されている。自動車に採用しない理由はあるだろうか?