見た目は旧車 中身は最新 ペンブルトンT24へ試乗 戦前スポーツカーへのオマージュ

公開 : 2023.06.09 08:25  更新 : 2023.06.09 11:39

クラシック・スポーツカーの魅力を再現しつつ、優れた動的特性と現代的な扱いやすさを融合させたT24。英国の公道での印象はいかに。

現代的なテクノロジーをあえて拒否

これは、クラシックカーのご紹介ではない。ペンブルトンT24は、れっきとした2023年の最新作だ。ただし写真でおわかりの通り、現代的なテクノロジーをあえて避けている。それこそ、このクルマが誕生した理由といえる。

ペンブルトン・モーター社がグレートブリテン島の中東部、ウスターシャー州に創業したのは1999年。三輪スポーツカー用のセルフビルド・シャシー製造でスタートし、これまでに約400台分を提供してきた。

ペンブルトンT24 (英国仕様)
ペンブルトンT24 (英国仕様)

創業者のフィル・グレゴリー氏は、その後に若き息子のガイ・グレゴリー氏へ経営を継承。近年は、2種類の公道用モデルを提供するまでに成長している。その1つがVスポーツという三輪スポーツカー。もう1台が、今回試乗した四輪のT24となる。

ワークショップは小さく、精鋭の技術者5名によるチームで、1台1台が手作りされている。彼らが許容できるT24の年間生産数は、10台ほどだという。

戦前のクラシックカーは信頼性がいまひとつで、運転が難しいと考える一方、クラシカルでピュアな運転体験を堪能したい。そう願うクルマ好きのための1台が、このT24だ。信頼できる現代の部品を用いながら、往年のデザインでまとめ上げられている。

モトグッツィの4ストロークV型2気筒

T24のカギとなるのが、パワートレインだろう。ボディの先頭で存在感を放つエンジンは、モトグッツィ社の4ストロークV型2気筒。バンク角が90度の空冷で、排気量は853ccのオートバイ用だ。ちなみに、穏やかな744ccも選べる。

フロントアクスルより前方に、完全にむき出し状態で搭載され、後方にシトロエンの4速マニュアル・トランスアクスル・ユニットが組まれている。ギア比はペンブルトン・モーター社が独自に設定したもので、コクピットへのリンケージもオリジナルとなる。

ペンブルトンT24 (英国仕様)
ペンブルトンT24 (英国仕様)

79psの最高出力は低く思えるが、T24の乾燥重量は僅か361kg。1t当たりの馬力は219psとなる計算で、不足ない。この軽さのおかげで、英国では車両認可の規則(IVA)が一般的なモデルほど厳しくないというメリットもある。

ボディは、オースチン・セブン・スペシャルに似たスタイリングのアルミ製で、職人が組み上げたチューブラー・フレームを覆っている。シャシー側もアルミ製。ボディフレームと溶接やリベットで固定され、高剛性のセミモノコック構造を実現させている。

サスペンションは前後とも独立懸架式。ダンパーはプッシュロッドを介して動かされ、ダンパーとコイルスプリングはシャシーのサイドシル側に組まれている。低重心化に貢献してもいる。

フロント側のディスクブレーキは、ドライブシャフトの付け根に組まれたインボード・レイアウトで、バネ下重量を軽減。前後の重量配分は51:49と、理想値といっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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