最高のMモデルが得る2文字 BMW M3 CSへ試乗 プラス40ps マイナス20kg 前編

公開 : 2023.06.14 08:25

M3 コンペティションをベースに一層のチューニングが施された、特別なCS。英国編集部がその仕上がりを評価しました。

素晴らしいドライバーズカー、M5 CSの弟

G80型のBMW M3に「CS」が追加された。ひと回り大きいBMW M5にもCSが存在するが、こちらは現行のMモデルとして最高水準の仕上がりにある。日常的な乗りやすさを担保しつつ、新次元といえる動的能力を宿した、スーパーサルーンだ。

今回のM3 CSは、同等のレシビで仕立てられた、ひと回り小さい4ドアのMモデルに当たる。もう1台の傑作が誕生しても不思議ではない。

BMW M3 CS(欧州仕様)
BMW M3 CS(欧州仕様)

だたしM3 CSの場合、ハードウエアの大部分をBMW M4 CSLと共有している。これが素晴らしい2ドアクーペなことに間違いはないが、歴代2台のCSLに並ぶほどの、象徴的な印象は残さなかった。あと少し、という部分がゼロではなかった。

BMW M社で開発責任者を務めるダーク・ハッカー氏は、自らM5 CSの弟に当たると主張する。大きな兄で成功した方向性を、もう一度繰り返しただけだったという。唯一の違いは、片方のエンジンが8気筒で、一方が6気筒だったこと程度らしい。

その成果を確かめるには、実際に運転してみるしかない。かくして、深く恋に落ちてしまうような、素晴らしい能力を宿していた。

既存のM3 コンペティションでは叶えることができなかった、従来のM3らしい敏捷性を取り戻したG80型であることは間違いなさそうだ。素晴らしいドライバーズカーだといっていい。

ただし、試乗で許された時間は非常に短く、走れた距離は50kmにも届かなかった。また、生産初期のデモ車両だったということも、含みおきいただきたい。

ブーストアップで+40ps 0-100km/h加速3.4秒

先代のF80型M3にも、モデル末期にCSが投入されたことをご記憶の読者はいらっしゃるだろう。パワーアップは10psと限定的で、生産の最後を飾る特別仕様にも思えたが、シャシーにはそれ以上といえるチューニングが施されていた。

G80型のCSの場合、3.0L直列6気筒エンジンは、ベースとなったM3 コンペティションから40psも増強。M4 CSLと同等の550psを獲得している。ECUの書き換えと、ターボブーストを0.4barから2.1barへ高めたことで実現されている。

BMW M3 CS(欧州仕様)
BMW M3 CS(欧州仕様)

最大トルクは変わらず、といっても不足はないが、66.1kg-m。エンジンマウントは強化されており、ダイレクト感を高めている。トランスミッションは8速オートマティックが組まれ、四輪が駆動される。

パワーアップに伴い、アクティブ・ディファレンシャルにも改良が施され、前後のトルク分配は従来以上にリア寄りとなった。スタビリティ・コントロールをオフにすると、完全な後輪駆動状態も選べる。

0-100km/h加速は、後輪駆動のM4 CSLが3.7秒でこなすのに対し、四輪駆動のM3 CSでは3.4秒へ短縮している。車重は1625kgに対し1765kgと、140kgほど重いにも関わらず。

惜しくも今回の試乗では、スタビリティ・コントロールをオフにする機会はなかった。指定されたルートは初めて走る場所で、筆者の後ろにも他のメディアのM3 CSが続いていたのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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