小型車は「下」に見られる? クルマの偏見、記者の反省 高級車は「得」か

公開 : 2024.02.11 18:05

高級車に乗っていると周囲から気を遣われ、小型車だと手荒く扱われる……。クルマの大きさや年式、ブランドイメージによる「決めつけ」と、それが及ぼす影響について反省を交えながら考えてみた。

小さいクルマは風当たりが厳しい?

道路で小型車を見かけたとき、あるいはその後ろを走るとき、あなたはどう思うだろうか?

小型車は軽くてシンプルで経済的だし、実用的なクルマだから、きっと賢い人が乗っているに違いない……そう思うだろうか?

欧州ではフォード・フィエスタのような小型車が若いドライバーに人気だ。
欧州ではフォードフィエスタのような小型車が若いドライバーに人気だ。

本誌AUTOCARの編集者・ライターたちは、確かにこのような小型車に夢中になる。

でも、筆者(英国人)のように、「頼むよ、どいてくれ! こっちはアウディ/メルセデス/テスラに乗っていて、行くところがあるんだ」と思う人もいるだろう。

本当に申し訳ない。しかし先日、筆者は英国の二車線道路である小型車に遭遇した。まだ新しいそのクルマは、ラウンドアバウトを出てから何も追い越す意思を見せないまま、追い越し車線を走っていた。それが例えばドイツ製の新型SUVなら、素早く追い越しをかけるか、左に寄るかのどちらかだろう。筆者は快く思わなかった。この小型車はきっと居座り続けるに違いないと思い込んでいた。でも、実際は違ったのだ。

こんなことを考えるのは筆者だけではないはずだ。筆者は仕事柄、大小問わずさまざまなクルマを運転するが、小さくて安いクルマに乗っているときよりも、高そうな洒落たクルマに乗っているときのほうが、周囲のクルマから気を遣われる傾向にある。

もしあなたが大型の高級車に乗っているのなら、今度整備に出すとき、一番小さくて安い代車を頼んでみてほしい。周囲からどのような扱いを受けるのか、そしてそれがどんな気分かを確かめるために。

購入をためらうきっかけにも……

見た目によるイメージは、長年の経験と条件付けから来るものだと思う。小型車には一般的に、予算の限られた若いドライバーが乗るものという固定観念がある。古くて安い小型車で飛ばしているのは、中年のブルーカラー。新しくて小綺麗なハッチバックは、静かな老後を送る高齢者……。

このような「決めつけ」によって、素晴らしいクルマを買わなくなる人が世の中にどれだけいるのだろうか。

Aセグ車のキア・ピカントは筆者(英国人)のお気に入りの1台。
Aセグ車のキア・ピカントは筆者(英国人)のお気に入りの1台。

筆者は、一番小さなAセグメント車のキア・ピカントとヒョンデi10が大好きだ。この2台はおそらく、家族の日常の足として購入すべきベストな選択肢だろう。しかし、いざ買うとなると、頭の中にある光景が浮かんでくる。高速道路で他車を追い越すとき、後ろから来た不届き者が、追い越し車線から出るようにせかすのだ。

こんなことは永遠に続くのだろうか?

英国ではブランドイメージや知名度の差も大きいようで、バッジで判断される節がある。特に新規参入のメーカーは、学校の転入生のようにいじめられっ子になりやすい。

筆者の中では、中国の長城汽車はプロトン(マレーシアのメーカー)に似ているし、BYDについて語るのはまだ早いと思っている。でも、テスラは、アウディやメルセデス・ベンツと同じような「スピリット」で高速道路を走っているように見える。

自動車業界は今、この100年で最も大きな変革期にある。消費者の趣味嗜好は、メーカーの戦略にも大きな影響を与えている。

キアは、今や8万ポンド(約1500万円)級のSUVを販売している。ヒョンデはとても楽しいEVを作る。そうした動きが、小型車に対するわたし達の考え方を変えるきっかけになればいいと、筆者は願っている。

とりあえず、追い越し車線にのんびりとどまっている諸君、急いでくれ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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