先進の「高級SUV」でアウディに対抗 中国セレス、欧州市場へ進出 BEVとレンジエクステンダー導入へ

公開 : 2024.06.03 06:05

中国のセレス(賽力斯)が今年後半、3車種のEVを欧州市場へ導入する。デジタル技術を重視した小型・中型・大型のSUVタイプで、アウディやテスラを主要ライバルに見据えている。

3車種の新型SUVを年内導入

中国の自動車メーカーであるセレス(賽力斯)は、メルセデス・ベンツアウディテスラといった高級車ブランドを視野に入れ、欧州市場への進出準備を進めている。

セレスは今年後半、3車種の新型SUV「5」「7」「9」を欧州に導入する予定だ。バッテリーEVとレンジエクステンダーEV(ガソリンエンジンで発電するEV)を発売する。

大型SUVのセレス9(中国ではAITOブランドから「M9」として発売)
大型SUVのセレス9(中国ではAITOブランドから「M9」として発売)    セレス

小型SUVの5は、テスラ・モデルYフォルクスワーゲンID.4への対抗馬となるエントリーモデルだ。76kWh(使用可能容量)のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーを搭載し、欧州WLTPサイクルにおける航続距離はシングルモーター車で最長480km、デュアルモーター車で最長450kmとされている。

5のシングルモーター車では永久磁石同期モーターを採用しており、最高出力272psと最大トルク36.8kg-mで後輪を駆動する。これにより、0-100km/h加速タイムは7.1秒となる。

デュアルモーター車はフロントにAC同期モーターを追加し、合計出力495psと最大トルク68.8kg-mを発生。0-100km/h加速は4.5秒に短縮される。

どちらのバージョンも最大100kWの急速充電に対応し、わずか30分で30~80%の充電が完了するという。

5にはまた、1.5Lターボガソリンエンジンと40kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを使ったレンジエクステンダーEV(以下、REx)も用意されている。

シングルモーター、後輪駆動のRExは最高出力266psと最大トルク36.0kg-mを発生し、0-100km/h加速は7.1秒。バッテリーのみでの航続距離は183km、エンジンの燃費は16km/lである。

デュアルモーターのRExは、合計出力486ps、最大トルク67.7kg-mとBEVより若干パワーが劣るが、加速に優れ、0-100km/h加速を4.4秒で達成する。

いずれにせよ、5の車両重量は2トンを超える。最軽量バージョンのシングルモーターRExは2220kg、デュアルモーターRExは2335kg。BEVはこれらRExよりさらに15kg重い。

デジタル技術に「優位性」

5と同時に登場するのが、ランドローバー・ディスカバリーをライバルに見据えた6人乗りSUVの7だ。

パワートレインはRExのみで、5 RExと同じ40kWhバッテリーと266psのリアモーターを搭載する。デュアルモーター車では前後に永久磁石同期モーターを使用し、合計出力440psと最大トルク66.6kg-mを発生、0-100km/h加速は4.8秒となる。

中型SUVのセレス7
中型SUVのセレス7

欧州WLTPにおけるバッテリーのみの航続距離は、シングルモーター車で135km、デュアルモーター車で140kmとされる。

大型SUVの9の欧州仕様はまだ発表されていないが、5と7よりも大型で、BEVとRexを設定している。欧州では5と7の後に登場する。

セレスは、先進的なデジタルサービスとソフトウェアの無線(OTA)アップデートを自社モデルの特徴に挙げている。欧州車と比較して、アップデートの迅速さに優位性があるという。

セレスの海外市場責任者であるJiaxi You氏は取材で、「セレスはテクノロジーとインテリジェンスによってラグジュアリーを再定義しようとしている」と語った。

「新しいソフトウェア・バージョンが用意できたら、OTAアップデートでお客様にお届けすることができます。ソフトウェアは週ごとに進化していきます。当社は常に製品を改善するために、お客様からのインプットやフィードバックを集め続けています」

こうした対応は「従来の開発よりもはるかに機敏」であり、「海外市場専任の担当者」により、新機能を現地の嗜好に合わせて調整できるという。

「さまざまなシナリオについて、お客様からのフィードバックを注視しています。バグ修正であれば一晩ですぐに実行できますが、製品のアップグレードや新機能追加の場合は、OTAが増えすぎないようにバンドル(セット化)します」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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