市場を「ひっくり返す」能力! ロータス・エレトレ S アウディSQ8 e-トロン 電動SUV直接比較(2)

公開 : 2024.06.22 09:46

欧州ブランドの電動EVとして、市場をリードしてきたアウディQ8 中国資本で新市場の開拓を目指した、ロータス・エレトレ S AUTOCAR史上初の2ブランド対決 大胆な1歩は報われたのか?

実際より低めの価格設定 1m毎に感じる車重

ロータスエレトレの車内は、どこを切り取っても、惹き込まれるような高級感に満ちている。軽さと質実さを追求していたブランドが、素晴らしい贅沢を叶えてみせた。20万ポンド(約4000万円)するクルマの内装だといっても、納得できる水準にある。

対するアウディSQ8 e-トロンのインテリアは、ドイツ車らしく整然としたデザインで、製造品質はソリッド。長時間を快適に過ごせるものの、エレトレから乗り換えると普通に感じられてしまう。上質でも、オーッと声を上げるほどの要素が見当たらない。

ロータス・エレトレ S(英国仕様)
ロータス・エレトレ S(英国仕様)

新市場でのプレゼンスを確立したいロータスが、利益を優先しなかったことは間違いないだろう。実際より、低めの価格設定にあるように思う。この印象は、運転体験にも当てはまる。

それでも、エレトレを穏やかに走らせている限り、ドライバーを魅了するような特徴が強いわけではない。ロータスは、フィーリングの軽さを主張するけれど。

今回の試乗車は、オプションのアクティブ・アンチロールバーや後輪操舵システムの備わらない、エレトレ Sだった。これらが装備されていれば、操縦性はもっと機敏に感じられたかもしれない。エレトレ Rには標準で与えられるアイテムだ。

公道を飛ばし始めると、軽くない車重を1m毎に感じてしまう。だが動的な能力の幅が広く、重々しくは感じられないのは、ロータスが慎重にシャシーチューニングを詰めた結果だろう。

スポーツ志向なSUVというわけではない

乗り心地は、エレトレ Sの方が優秀。アスファルトの剥がれた穴をしなやかに均し、常に安定した印象を伴う。ステアリングは直感的。重み付けも丁度良く、ダイレクトというわけではないが、スローな感じはしない。

姿勢制御は一貫性が高く、引き締まりつつ、旋回中でも滑らかに路面の不整を通過できる。過度に硬く感じられたり、凹凸に反応する仕草もない。グリップ力は悪くなく、シャシーバランスに優れ、611psの最高出力を最大限に路面へ伝えられる。

アウディSQ8 e-トロン・スポーツバック・ブラックエディション(英国仕様)
アウディSQ8 e-トロン・スポーツバック・ブラックエディション(英国仕様)

かといって、エレトレ Sはスポーツ志向なSUVというわけでもない。ホイールベースの長い、大きなクルマという印象が拭えない。

積極的にカーブへ侵入すると、外側のフロントタイヤへ荷重が大きく移り、一定のボディロールを許す。ポルシェカイエンや、SQ8 e-トロンのように、クルリとタイトに旋回する爽快さはない。機敏とは表現しにくいだろう。

SQ8 e-トロンはひと回りボディが小さく、グリップ力が僅かに優れ、明らかにコーナリングに締まりがある。素早く旋回でき、トリプル・モーターのレイアウトを活用し、鋭くカーブから脱出していける。

姿勢制御や操縦性で優れることは間違いない。走行中の車内の静寂性も高い。その反面、エレトレ Sほど入念なチューニングを施された印象が伴わない。快適性と敏捷性という、能力の幅も比べるとやや狭いといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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