ポルシェ911 詳細データテスト MT+NAの快感 公道志向の足回り 遮音性はやや改善の余地あり

公開 : 2024.07.13 20:25

GT3はほぼ完璧な911でしたが、公道では十分に旨みを味わえないサーキット志向のクルマでした。その不満を払拭してくれるのが、限定モデルのS/T。ストリートでMTの走りを存分に楽しめるセッティングとなっています。

はじめに

看板モデルである911に関して、ポルシェは気まぐれのようなサフィックスをつけることはない。新たなグレード名が加わることはきわめて珍しい。

もっとも馴染みがあるだろうSは、1967年に初登場した。比較的新しいGT3もすでに四半世紀を経て、世代を重ねて定着している。目新しいと思えるものも、ポルシェの歴史をたどるとルーツのの古さに気付かされることになる。2016年には軽量化を図り走りを突き詰めたスペシャルモデルのRがお目見えしたが、これも1967~68年に少量生産されたレースモデルの911Rに由来している。

テスト車:ポルシェ911S/T
テスト車:ポルシェ911S/T    MAX EDLESTON

となると、今回テストする911S/Tはじつに特別な存在だ。少なくとも、これまで公には使われていない名を持つ911である。60年代に無駄を削ぎ落としたRが成功したのを受けて、ポルシェはこのアイデアをふくらませようと試みたが、新たなバリエーションの型式認証にかかるコストを理由に諦めている。

それに代わり用意したのが、モータースポーツのカスタマーに向けた911S用のレーシングキットと軽量化モディファイだ。その後、1970年にはロードカー向けにM471と銘打った同様のオプションを設定。ドイツ語でメア・ミンダー、英語にすればモア・レスと呼ばれるスパルタンなパッケージである。これらの俊敏でパワフルな仕様、公式には911Sのオプション装着車だが、非公式にはSTと呼びならわされている。

それから半世紀余り。サーキット志向のGT3やGT3RSの流れを汲みつつ、公道向けでとことんアナログにこだわったドライバーズカーに与えられたのがS/Tの名だ。922世代のS/TはカレラSのオプション装着車ではない。現在もポルシェのGTモデル開発に携わっているワルター・ロールに言わせれば、彼が乗った中でもベストなロードカーだという。2度の世界ラリー王者が絶賛するモデルの実力、確かめてみようではないか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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