ポルシェ911 詳細データテスト MT+NAの快感 公道志向の足回り 遮音性はやや改善の余地あり

公開 : 2024.07.13 20:25

結論 ★★★★★★★★★★

ポルシェが現行911GT3を発売した際、わずかながら失望したのは、公道向けでないところがあることに気づいたからだ。優先事項は、ラップタイムを稼ぐことだった。ウイングのない、おとなしめのツーリング仕様も同じように俊敏だったが、サーキットのようにスムースな路面でないと暴れがちで、992世代のGT3の容赦ないキャラクターは変わらないことを知った。

このときは、好機を逃したように感じられた。あのクルマはおおむね、ナンバー付きでは最高に楽しいクルマだった。いや、いまでもそうだろう。高回転型のフラット6に、本気で走らせたときのアゴが落ちるようなスロットルでのアジャスト性、高品質なキャビンをあわせ持つ現行GT3は、完璧に近い。われわれとしては、ポルシェのGT部門が速さを追求したことだけが、玉に瑕となったクルマだといいたい。

結論:GT部門はいつもと違うレシピで、これまでにないほどの傑作を生み出した。
結論:GT部門はいつもと違うレシピで、これまでにないほどの傑作を生み出した。    MAX EDLESTON

911S/Tは、スローなクルマとは言い難いかもしれない。しかしながら、これまででもっともシリアスなGT3の基本設計に、部分的にGT3RSのノウハウを取り入れ、軽量化を施しつつ公道重視のサスペンションを組んだそれは、究極の911といっていい。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

S/Tの最高速は意図的に300km/h以下へ抑えているが、ギアリングから計算すると320km/hを超えることが可能だ。少し前に310km/h出るとされる後輪駆動の992GTSでアウトバーンを走った際には、メーター読みで320km/hを出した。だから、S/Tもそれができるのではないかと思っている。

マット・ソーンダース

レーステックスやアルカンターラを使っていないGT部門のポルシェに乗ったのははじめてだ。しかし、S/Tのスムースレザーを巻いたステアリングホイールは、GT3のように強烈な方向転換と相まって、かなり好きになった。

オプション追加のアドバイス

ショアブルーはS/T専用色で、見栄えはとてもいい。オーダー塗装ののペイントtoサンプルは1万2500ポンド(約258万円)。ヘリテージデザインパッケージも悪くないが、やりすぎ感もある。センターのドリンクホルダーは218ポンド(約4.5万円)取られる上に、置いた飲み物の容器がシフトチェンジの邪魔になる。

改善してほしいポイント

・もっと遮音性を高めると、GTカーとしての改善が見込める。
・重量を抑えつつ、ケイマンGTSの4.0Lユニットに用いるデュアルマスフライホイールを装着してほしい。12万5000ポンド(約2575万円)くらいで、911SRとか銘打って売ってもらいたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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