メルセデスAMG GT 詳細データテスト 高まった安定性 神経質さの残るハンドリング 低い静粛性

公開 : 2024.08.24 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

メルセデスAMGは、2代目GTの開発を、R232世代のSLと並行して行うことにした。この2モデルはキャビンの構造や内装、エンジンやアルミスペースフレームの大部分をシェアしつつ、デザインや定義づけをはっきり分けた。スポーツカーのマーケットで手に入れうるシェアを最大化しようと試みたのだろう、と思うのではないだろうか。

だが、それは事実ではない。SLは2座の補助的なリアシートとパートタイム4WDシステムの4マチック+を備え、従来モデルより使い勝手を高めたかもしれないが、よりハードなAMG仕様のサスペンションを得てスポーティさを増したように感じられる。

エンジンはV8が2機種のほか、4気筒を設定するマーケットもある。トランスミッションはクラッチ式ATで、エンジン直後に搭載される。
エンジンはV8が2機種のほか、4気筒を設定するマーケットもある。トランスミッションはクラッチ式ATで、エンジン直後に搭載される。    JACK HARRISON

GTはというと、多くは共通だ。先代は2シーターの後輪駆動だったが、新型はそれを捨てた。全車4WDとなり、全長は30cm近く伸びた。重量は250kg程度、2016年に計測したGT Sロードスターと今回のテスト車を比べれば、277kgの増量だ。800psオーバーのPHEVとなった、GT63 S Eパフォーマンスのような電動デバイスを一切持たないにもかかわらず、である。

サイズは増しても、エクステリアは先代との類似性が明らかだ。ワイドなロングノーズと力強く踏ん張ったテールは、ボディパネルやディテールがすべて変わっているにもかかわらず、2代目もすぐにAMG GTだとわからせてくれる。

エンジンもSLと同じく、チューニング違いで2タイプのAMG製4.0LツインターボV8を設定。英国未導入のGT55には475ps/71.3kg−m、今回のGT63は585ps/81.6kg-mだ。また、北米仕様などには、4気筒のGT43も存在する。

ギアボックスは、先代のリアマウントされたトランスアクスルDCTではなく、湿式クラッチを用いたスピードシフト9速ATをエンジン直後に搭載する。4.0LのV8ユニットは、インタークーラーの配置を変更し、吸排気ポートを改良。オイルパンを再設計し、クランクケースに放熱対策を加えた。

サスペンションは前後とも、アルミ素材を主体としたマルチリンク。SLのように、スプリングはスティールのコイルで、伸び側と縮み側それぞれにバルブを持つ新型アダプティブダンパーを装備する。

GT55とGT63には、AMGのアクティブライドコントロールを採用。これは、みごとだった先代のGTブラックシリーズで導入され、SL63にも与えられるシステムで、スタビライザーに代えて、各輪に設置した油圧アクチュエーターで車体の傾きをコントロールする。マクラーレン的に、各ダンパーは油圧で相互接続されている。

これにより、たとえば左前輪側のダンパーが縮むと、右前輪側は伸びる。圧を変えることもでき、強い圧をかければロール剛性は高まるし、逆も可能だ。

四輪操舵も標準装備。100km/hまで、最大2.5度の後輪操舵が可能だ。さらに、リアには電子制御LSDを搭載し、パワーをかけた際にもコースティング中にも可変ロッキング効果を発揮。ブレーキを用いたトルクベクタリングも採用している。

リアトランスアクスルを廃し、エンジンとトランスミッションを隣接させたことで、前後重量配分は大幅に変化した。先代は47:53だったが、新型は54:46だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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