メルセデスAMG GT 詳細データテスト 高まった安定性 神経質さの残るハンドリング 低い静粛性

公開 : 2024.08.24 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

ハンドリングに関していうと、先代GTは好き嫌いがはっきり分かれるものだった。動揺するほどクイックなステアリングレスポンスと、じつに、なんというか、よく動き回る後輪により、ドライバーはめったに気が抜けなかった。このハイリスク・ハイリターンなアプローチを愛するドライバーもいれば、身が持たないというドライバーもいる。路面が濡れていると、ちょっと怖いことが多いという声もある。

2代目も、初代のワイルドさの痕跡が感じられるところはある。少なくとも14.1:1というステアリングのイニシャルレシオと、アグレッシブなフロントキャンバーはその理由となっている。もちろん、フロントタイヤのグリップは強力。それらが相まって、ショッキングなほど積極的にコーナーへ切り込んでいく。

先代M5コンペティションのようなxドライブのBMW Mモデルとは違い、トラクションと思いどおりのヨーとのスイートスポットは見出せない。
先代M5コンペティションのようなxドライブのBMW Mモデルとは違い、トラクションと思いどおりのヨーとのスイートスポットは見出せない。    JACK HARRISON

AMG GTに対しては、断固たる態度で臨む必要がある。というのも、かなりレスポンスがよく、表面上は正確だが、いつもこの上なく従順というわけではない野獣的なクルマだからだ。あるテスターは、ターンインでフロントアクスルがタイヤを必要以上にすり減らそうとしているように思える反面、コーナー出口へ向かう際にはステアリングがセンターに戻りたがらないように感じる、と口にした。

フロントはまた、コーナリング中のバンプや路面の波打ちを、思ったより敏感に拾ってしまう。もちろん、サスペンションをコンフォートモードにすれば、それらは穏やかになるが、持って生まれた神経質さは残る。エキサイティングでもあるが、直感的でないこともある。

その反面、4マチック+の採用により、シャシーのアジャスト性からはナチュラルさや激しさが減っている。それにより、全天候型の安心感が増しているのは狙いどおりだろう。

基礎はしっかりしている。コーナーインはこの上なく楽で、ボディコントロールもみごと。しかし、LSDを最大限効かせて、ESPを緩めても、とくに遊ぼうとする感じはない。後輪駆動モードにすることもできるが、街乗りで使いたいようなものではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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