アウディQ6 E-トロン 詳細データテスト 新プラットフォームの高い実力 質感と操作性は1歩後退

公開 : 2024.10.12 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

PPEは、アウディQ4 E-トロンやフォルクスワーゲンIDの各モデルに使用されるMEBの親戚みたいなものだと思われるかもしれない。しかし、MEBの後継ではなく、より魅力的なテクノロジーを用いる高価格帯のモデルに採用されることになるようだ。

電気系は800Vシステムで、発熱ロスが少ない高電圧とすることで、充電速度や効率の改善を図った。モーターも新型で、最新のエンジンは多くがそうであるように、モジュラー設計となっている。実際、モーターの長さが増すほど、よりパワフルになる。

新たなプラットフォームは、より効率のいいバッテリーや電気系、モーターの採用を可能にした。
新たなプラットフォームは、より効率のいいバッテリーや電気系、モーターの採用を可能にした。    JACK HARRISON

そのほかにも、よりタイトなコイルの巻き具合やダイレクト油冷、素材変更などが、パワー密度や効率の向上に寄与している。エネルギー消費の削減は、とくに大きな目的だ。それは、Q8 E-トロンの悲惨さを考えれば理解できるだろう。

リアのメインモーターは、一般的な永久磁石同期式。クワトロモデルやSQ6にはフロントに第2のモーターが設置されて四輪を駆動するが、こちらは磁石を使わない非同期インダクションモーター。その利点は、動力を必要としないときにはほぼロスなくフリーに回ることだ。

発売時のバッテリーは2種類で、小さいほうは総量83kWh(実用量75.8kWh)で、エントリーグレードのスポーツに、大きいほうは100kWh(実用量94.9kWh)で、シングルモーターのスポーツ・パフォーマンスとデュアルモーターのクワトロやSQ6に搭載される。

モーター同様、バッテリーパックもモジュラー設計で、1パックは180の角柱セルで構成され、大きいほうは12モジュール、小さいほうは単純にそのモジュール数が少ない。Q8 E-トロンに比べたら、Q6 E-トロンのバッテリーモジュールは、数は少ないが大きい。アウディによれば、配線や接点を大幅に削減し、熱となってしまうエネルギー損失も大幅に抑えたという。

MEBに採用されなかったアイテムとしては、エアサスペンションも挙げられる。Q6でも、今回テストする発売記念のエディション1を別にすれば、SQ6の専用装備なのだが。標準状態の車高は、コイル仕様より28mm低いが、オフロードモードでは最大45mm引き上げることができる。英国仕様のコイルサスペンションは、ほとんどが周波数選択式パッシブダンパーとの組み合わせとなる。

メカニカル面と同時に、デザイン言語も新しくなった。それは、とくにフロント周りに顕著だ。2000年代初頭以来の大きなシングルフレームグリルは健在だが、開口はせず、ボディ同色となっているのでさほど目立たない。上下分割ヘッドライトやリアのライトバーは、最近のトレンドに沿ったものだ。

いっぽうで、ホイールアーチ上のキャラクターラインは、1980年のクワトロのブリスターフェンダーを思わせる。サイドシルの黒いパーツは、バッテリーの搭載位置を示唆しているようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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