アウディQ6 E-トロン 詳細データテスト 新プラットフォームの高い実力 質感と操作性は1歩後退

公開 : 2024.10.12 20:25

内装 ★★★★★☆☆☆☆☆

インテリアにも、アウディの方針転換が表れている。実体ボタンはほとんどが姿を消し、Q8 E-トロンに見られた空調や二次的な機能の操作を担う下段ディスプレイも備えていない。その代わりに採用されたのが、11.9インチのドライバーディスプレイと、14.5インチのタッチ式インフォテインメントシステム画面を統合した。巨大な曲面ディスプレイだ。

アウディはそれを、MMIパノラミックディスプレイと銘打った。オプションでは、助手席側に独立したタッチ式ディスプレイが用意されている。われわれの価値観に照らせば、使い勝手に関しても、デザイン的な訴求においても、これは大きすぎる退歩だ。

なめらかでソフトなレザーはともかく、プラスティックなどの素材はチープでガッカリ。助手席ディスプレイは、ナビやメディアの操作は数cm横のセンター画面でもできるし、映像などは手持ちのタブレットなどより見づらい。
なめらかでソフトなレザーはともかく、プラスティックなどの素材はチープでガッカリ。助手席ディスプレイは、ナビやメディアの操作は数cm横のセンター画面でもできるし、映像などは手持ちのタブレットなどより見づらい。    JACK HARRISON

タッチ画面そのものは、アウディのMMIシステムでおなじみとなっていて、この手のデバイスとしては比較的いいほうの機能ぶりをみせる。下端には空調操作バー、右側にはショートカットの集合を配置。いずれも、Apple CarPlayやAndroid Auto使用時を含め常時表示される。なお、スマートフォンのミラーリングはワイヤレス接続が可能だ。タップやスワイプへの反応はクイックで、過去のアウディが装備していたタッチ画面のように、強く押さなければならないものではなくなった。

メニューの構造はおおむねロジカルだが、なかには作業工程の多い操作もある。また、なにをするにも左手を伸ばしっぱなしで画面上に目的の内容を探すのは、高級車らしからぬ所作だ。

標準装備の純正ナビもいただけない。Googleのデータを使用し、表面上はよくできているように見えるのだが、大きな問題がふたつある。まず、マップは常にサテライトビューで、見栄えはいいが。走りながら使うには画像が混み合い過ぎているうえに鮮明さも足りない。もうひとつは、デフォルトで設定された以外にルートの選択肢が提示されないことだ。

インテリアは全体的に、いまどきのクルマらしいルックスだ。ダッシュボードはシンプル化され、ディスプレイ以上に目立つものはほとんどない。アウディらしい質感はほとんど認められず、組み付けクオリティも特別なものではない。テスト車は、きしみ音やがたつきが気になった。価格のわりには、硬くてテカテカした素材も多すぎる。

センターコンソールには、グロスブラックのプラスティックパネルを設置。走行モードやスタビリティコントロール、スタート/ストップのボタンが配置されているので、画面同様にすぐ指紋だらけになってしまう。送風口周りも安っぽいプラスティックが使われ、雑な構成のトリムは、見た目も感触もとくにスペシャルなクルマだとは思えない仕上がりだ。

室内スペースは、中型SUVのアベレージといったところ。しかし、新開発のEV専用プラットフォームを用意したのなら、後席レッグルームはもうちょっとほしい。その点では、メルセデスのEQE SUVのほうが上だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事