【ミドシップ化は必然か?】 ブランドの流れからコルベットの歴史を俯瞰する

公開 : 2024.10.23 11:45

ミドシップへの正常進化、その背景

なぜフロントエンジンではキツいのかといえば、トラクションの偏りで4本のタイヤをうまく使えないからだ。リアエンドがスパッと切り落とされたコルベットのデザインではディフューザーを長くとれないし、リアウイングの効率も上げられない。

ポルシェ911のレースカーが、市販車のRRに対し、ミッドシップ化の超特例を勝ち取っているように、現代のGTレーシングの勘所はアンダーフロアの効率を最大化するディフューザー設計にある。

8代目コルベットのアプローチは、ミドシップ以外にあり得なかったといえる。
8代目コルベットのアプローチは、ミドシップ以外にあり得なかったといえる。    神村聖

一方ロードカーにとっては年々厳しさを増す歩行者保護という問題があった。ボンネットの下にすぐに硬いエンジンがあると、事故で跳ねてしまった人の頭部に重大な損傷を与える恐れがある。その結果近年はボンネットを低くデザインすることが難しくなっている。

ボンネット基部にエアバッグを仕込み、衝突の瞬間に持ち上げるという手法も流行ったし、そもそも低いOHVエンジンを積むコルベットは有利だったが、それでもVバンク内にスーパーチャージャーを載せたりもしていたわけで、限界は迫っていた。

以上の流れから考えると、現行のコルベットの立ち位置は”意外”ではなく”順当”そのもの。時代が求める要件とヨーロッパ・スポーツカー的アプローチ、そして北米市場を鑑みたローカライズ……。また基本設計に1000馬力オーバーのZR1や電動化が含まれていたことは当然で、その点でも8代目のアプローチはミドシップ以外になかったのだ。

Corvett 2024~「よーやく新しくなったか!」、そんなコルベット生みの親の声が聞こえてきそうなのが、颯爽とした現行型なのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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