「濃厚」イタリアン マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャン(1) 異なる個性の似た2台

公開 : 2024.11.09 17:45

フォードの5.8L V8から334psを獲得

そのロンシャンは、1972年のイタリア・トリノ・モーターショーでデビュー。1973年に提供が始まり、デ・トマソ・ブランドの重要な一角をなした。生産は1989年まで続いたが、合計の生産数は409台に留まる。

燃料タンクと燃料ポンプはツイン構成で、フロントに積まれたエンジンは、パンテーラと同じくフォードの5.8L V8プッシュロッド・ユニット。アレッサンドロは、その仕上がりを自負していた。

デ・トマソ・ロンシャン(1972〜1989年/英国仕様)
デ・トマソ・ロンシャン(1972〜1989年/英国仕様)

ダッシュボードのデザインは、豪華さより機能性を重視。ステアリングコラムはフォード由来であることを隠さず、車内空間は広かった。ジャガーメルセデス・ベンツとは異なる、エキゾチックさに惹かれた物好きな人は一定数存在した。

ただし、北米市場では認可を得ていない。パンテーラのように、製造品質にばらつきがあることへ、現地のディーラーが警戒したことが大きな理由だった。並行輸入で、20台程度が登録されている。

ロンシャンの351cu.in V8エンジンは、バルブの大径化とポート研磨で334psの最高出力を獲得。240km/hへ迫る最高速度へ到達も可能だった。英国価格は、当初1万7000ポンドほどだったが、10年で2倍以上に膨らんでいる。

トム・ジャーダとピエトロ・フルアのデザイン

当時のデ・トマソはカロッツエリアのギア社も傘下にあり、デザイナーのトム・ジャーダ氏がスタイリングを担当。1969年のコンセプトカー、ランチア・フラミニア・マリカを進化させつつ、トップの指示通りメルセデス・ベンツへ似たボディが生み出された。

フェンダーを埋めたのは、パンテーラ風のカンパニョーロ社製アルミホイール。ヘッドライトは四角く、中央に存在感の強いグリルが据えられた。ロンシャンという名称は、フランスの競馬場にちなんだものだ。

デ・トマソ・ロンシャン(1972〜1989年/英国仕様)
デ・トマソ・ロンシャン(1972〜1989年/英国仕様)

対して、キャラミのスタイリングはデザイナーのピエトロ・フルア氏。ヘッドライトは丸目の4灯で、イタリア・トリノのワークショップ、エンボ社がボディパネルを成形した。シャシーに改良を施したのは、マルケージ社だ。

ボンネットは、ロンシャンとプレスラインが違う。リアピラーも異なり、リアウインドウは幅が僅かに狭く、ルーフパネルの裏側にはロールバー風のプレスが施されている。

テールライトは、ロンシャンがアルファ・ロメオ1750からの流用。キャラミは、シトロエンSMから拝借された。

フロントには、フォードの5.7Lユニットより3割ほど軽い、ツインカムV8エンジンをマウント。空間に余裕はなく、吸排気系は専用に設計されている。トランスミッションはZF社製の5速マニュアルか、クライスラー譲りの3速オートマティックが組まれた。

この続きは、マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャン(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

マセラティ・キャラミ デ・トマソ・ロンシャンの前後関係

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