重いEV 3基のモーターで「軽量感」演出 アルピーヌが独自技術を披露

公開 : 2024.10.23 06:25

アルピーヌは重量級EVで「スポーティなハンドリング性能」を実現するために、3基の電気モーターと制御ソフトウェアを駆使する。パワー配分を複雑に変化させ、「軽さ」を演出する。

複雑なモーター制御で「軽さ」を生む

フランスのアルピーヌは、電気自動車(EV)に革新的な出力管理ソフトウェアを採用し、バッテリーの重量増加を相殺する「軽快感」を実現することで、スポーツカーらしいハンドリングを目指す。

同社の唯一の現行モデルは車重1100kgのA110だが、これは量産車としては最も軽量な部類に入り、その俊敏な走りで高い評価を得ている。しかし、2030年までに発売を計画している7車種のEVは、必然的にはるかに重くなるため、ハンドリング性能をブランドの中心に据えている同社にとっては難しい課題となっている。

パリ・モーターショー2024で公開された「A390_β」コンセプト
パリ・モーターショー2024で公開された「A390_β」コンセプト

参考までに、コンパクトEVのA290(年内発売予定)でさえ車重は約1500kgある。新型SUVのA390の重量は未公表だが、プラットフォームを共有する同クラスの日産アリアは2000~2300kgである。

しかし、14日に開幕した『パリ・モーターショー2024』で、アルピーヌのフィリップ・クリーフ最高経営責任者(CEO)は記者団に対し、EVパワートレインを微調整し、A110の精神に則った軽量車の「挙動」を実現するつもりだと述べた。

「実現するのは、実際の軽さではなく、知覚される軽さです」

これを実現する上で重要なのが、パリ・モーターショーで発表されたコンセプトカー「A390_β」で採用された、フロントアクスルに2基のモーター、リアに1基のモーターを搭載するパワートレイン配置だ。

トルクベクタリング技術を使用して3基のモーターへのパワー配分を複雑に変化させることで、「非常に迅速なレスポンスを実現できます。まるで軽量車のような挙動です」とクリーフCEOは語った。

A390については「軽量車ではありませんが、そう感じられます。非常にクイックで、自然で、一体感があります」とした。

「プロのドライバーがテストし、彼らが望むシステムを入れた状態で走らせたところ、良いものであることがわかりました」

それでも、アルピーヌは「クルマの絶対的な重量」に取り組んでいることから、ルノーや日産の同等モデルよりも軽くなることが期待されている。

A390は、6か月後の公式発表に向けた最終テスト段階にあり、今後登場するEVの挙動の方向性を決定づけることになる。

昨年アルピーヌのCEOに就任する前、クリーフ氏はフェラーリ458やアルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオといった名高いスポーツカーのエンジニアとして知られていた。

そうした経験が5人乗りの電動SUVの開発に役立つかという質問に対し、クリーフCEOは「はい、違いはありますが、クルマを運転する際に得られる喜びは変わりません。スポーツカーを扱う際には、自分の入力に対してできるだけ早く、できるだけ確実にフィードバックを得る必要があります」と答えた。

「ステアリング、加速、ブレーキ、トランスミッションは高速かつ正確である必要があり、EVにはそれを実現する他の技術もありますが、ある程度の自由度もあります」

アルピーヌを純粋なスポーツカーメーカーではなく、「スポーツ専門」ブランドと表現したクリーフCEOは、2030年までに年間10万台の販売を目指すという計画と、同ブランドを「ポルシェアウディの中間」に位置づけたいという野心を繰り返し強調した。

アルピーヌがドイツの2大ブランドと同等の認知度を獲得しているかとの質問に対しては「いいえ、まったく違います」と答えたが、製品ラインナップの拡大、ディーラー網、モータースポーツ活動がその足跡を築くのに役立つと述べた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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