【詳細データテスト】メルセデスAMG Sクラス 強力なPHEV ハンドリング良好 快適性は犠牲に

公開 : 2024.10.26 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

過去のAMGモデルと比較するなら、0−161km/hが7.1秒というのは、2009年に24万9500ポンド(当時のレートで約3643万円)だったスーパースポーツ級モデルのSL65 AMGブラックシリーズより1.5秒も速い。また、キックダウンでの48−113km/hは、われわれが満点評価したF90型BMW M5 CSにコンマ3秒遅れるのみだ。

このS63がとてつもなく速いサルーンなのは驚かないが、ポテンシャルをフルに発揮しなくてもそれが感じられる。コンフォートモードで穏やかに加速していても、余力の底深さは明らかだ。パワートレインの電動要素はその大きな要因で、大型サルーンらしからぬ俊敏さをもたらすが、過剰にはならない。キックダウンが必要な場合には、ギアボックスは十分に素早く変速し、直後にロケットのように激しく加速するが、速度感は不気味なくらい感じさせない。

充電ポートは左側、給油口は右側のリアフェンダーに。バッテリー容量は13.1kWhで、充電能力はたったの3.7kW。電力が尽きていなくても、満充電に一晩かかりかねない。
充電ポートは左側、給油口は右側のリアフェンダーに。バッテリー容量は13.1kWhで、充電能力はたったの3.7kW。電力が尽きていなくても、満充電に一晩かかりかねない。

パワートレインにかかる負荷が常識的な範疇にあれば、普通はなめらかに変速する。もっともアグレッシブなスポーツ+に向けてモードを引き上げていくと、シフトを早めるために点火を切りつつ、電気モーターのトルクをフルに使って前へ進む勢いを保つ制御さえ使うようになる。効果的なテクニックだが、モーターに頼りすぎると、EVのように画一的なトルクデリバリーになってしまう。たとえ抑えめのV8サウンドが、エンジンの存在を忘れさせないとしてもだ。

ただし、そのデリバリーはみごとだが、魅力的というよりは印象的といいたくなる類のもの。完全な駆動系ともいえない。とくに低速では、ギクシャクすることもあるが、それはハイパフォーマンス仕様であろうとなかろうと、世界レベルの高級サルーンにふさわしいとは思えない。このハイブリッドシステムは、ノイジーなこともある。メカニズムが普通に動いて衝撃音を起こしているのかもしれないが、不調なのではないかと疑いたくなってしまうような音に聞こえるのだ。

もうひとつ不満なのが、V8に上乗せされたモーターのトルクが、必ずしもきめ細かく制御されていないこと。エンジンのトルクカーブとは無関係に、電力でブーストがかかるのだ。たしかに速いのだが、ちょっと落ち着かない走りになってしまう。

記事に関わった人々

  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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