【詳細データテスト】メルセデスAMG Sクラス 強力なPHEV ハンドリング良好 快適性は犠牲に

公開 : 2024.10.26 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

フェラーリ296GTB並みのパワーがあるPHEVだということはトピックになるだろうが、おそらくこのクルマでもっとも印象に残るのはハンドリングだ。びっくりするほどリニアなステアリングや、生まれついてのシャシーバランス、脇へ振れたり動揺したりしにくいサスペンションは、大きくなりすぎたC63のように感じることもしばしば。前後のアクスルがまるでひとつになったかのように動き、全長の長さを感じさせない。

メルセデスはAMG GT4ドアで、数々の複雑なシャシー制御システムをどう組織立てるか見極めたことを証明したが、同じことが今回も明らかに見て取れる。ベントレーフライングスパーを別にすれば、まずまずの路面の直線をきっちり落ち着いて走れる高級サルーンは見つからない。このS63もそれが可能だとは言えないのだが、かなり速く走らせるのがきわめて簡単なのもまた事実だ。走らせたい位置を正確に通せる自信が持てる。

まるでC63が大きくなったようなハンドリングを見せるのだが、電子制御の介入が早すぎて、振り回して楽しむのは難しい。
まるでC63が大きくなったようなハンドリングを見せるのだが、電子制御の介入が早すぎて、振り回して楽しむのは難しい。

その代わりに、諦めなくてはならないものもある。最たるものは全開走行時の物理特性で、アジャスト性は犠牲になっている。AMGダイナミクスを名前と実態がそぐわないプロモードにしていても、前輪をすぐに駆動して、ESPも早めに介入するのだ。

これほど大きなクルマが、ほとど間違った動きをしないのだから、それを嘆くのはおかしなことかもしれない。しかしそれでも、われわれが残念に思うのは、できるはずのことをやっていないからだ。

とはいえ、満足できる点もたくさんある。ブレーキのペダルフィールは、回生ブレーキがかなり介在するにもかかわらず悪くない。

記事に関わった人々

  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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