ポルシェ・タイカン 詳細データテスト 952psへ強化 進化したバッテリー 快適なアクティブサス

公開 : 2024.11.09 20:25

走り ★★★★★★★★★★

タイカンのラインナップに、遅いクルマは存在しない。ベースモデルの後輪駆動仕様でも、0−100km/hは4.8秒だ。その倍ほどもパワーがある4WDのターボSが、スロットルペダルを踏み込めばさらに速いことは想像に難くない。

この手のクルマのスタンディングスタートは、1度は経験する価値がある。ICE車に比べると、数字が示す以上に感覚がまったく違うのだ。

加速性能はICEのハイパーカー並みだが、EVらしくそれが瞬時に立ち上がる。ブレーキは低速時に不安定なフィールも出るが、制動性能は十分だ。
加速性能はICEのハイパーカー並みだが、EVらしくそれが瞬時に立ち上がる。ブレーキは低速時に不安定なフィールも出るが、制動性能は十分だ。

テスト当日、コースの路面はかなり湿っていたが、午後になってほぼ乾いた。それでも、気温は11℃と低かった。

スポーツプラスモードに入れてローンチコントロールを使うと、2.6秒で97km/hに到達。改良前のターボSが、もっといいコンディションで出したタイムを0.2秒短縮した。161km/hへは5.4秒、241km/hへは11.6秒で、最高速度は260km/hに達する。

この数字に匹敵するクルマがあるとすれば、そのひとつが現行の911ターボSだろう。暖かい好天時に計測したタイムは、0−97km/hは0.1秒勝るが、161km/hでは逆に0.3秒の差をつけられ、241km/hではその差が1.5秒に開く。

ブガッティ・ヴェイロンはどうだろうか。これはベースモデルではなくスーパースポーツが、近い数値をマークする。タイカンが241km/hに達する11.6秒の時点で、1200psのハイパーカーは16km/h上回っているにすぎない。

さらに驚きなのは、48−113km/hの追い越し加速だ。1.9秒というタイムは、ブガッティの1.7秒やフェラーリSF90ストラダーレの1.8秒に迫る。もちろん、武ガティやフェラーリはキックダウンが必要だが、タイカンは瞬時に加速する。現実的な状況では、リマックほどではないにせよ、これより速いものはまずないだろう。

当然というべきか、これらのパフォーマンスデータは、現実的な場面ではあまり意味を持たない。もっと重要なのは、歯切れよく、予測しやすい追い越し加速や、直観的なブレーキ、心地よい操作力だ。タイカンは、そうした基礎的な要素が上々で、その点はターボSもベーシックモデルも大差ない。

唯一残念だったのは、本気でスロットルを踏み込めなかったことだ。出力が低いほうのタイカンならば、ミサイルのような発進ぶりでなくても許されるが、ターボSは違う。パワーとトルクのデリバリーはかなり調整され、望めば運転しやすくスムースだ。しかし同時に、使える推進力には常に注意が必要だ。テスト車は2356kgもあったが、余裕で走らせるポテンシャルを秘めているのだから。

幸いにもブレーキは、ターボSを減速させるのがやっとというレベルにはとどまっていない。ペダルは踏み応えが硬く明確で、ムラがあるのは低速で緩やかにブレーキを効かせていて、そこから急ブレーキをかけたときくらいだ。必ずしも、回生ブレーキではなく、適切な摩擦ブレーキが必要だとはっきり思わせるほど素早く効くシステムではないが、それは小さな問題だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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