コンパクトでプレミアム! ヒョンデ・インスターへ試乗 コダワリ感じるインテリア

公開 : 2024.11.18 19:05

活気に欠ける動力性能 運転体験の印象は薄い

駆動用モーターは、94psか114psの2択。駆動用バッテリーは、前者には42kWh、後者には49kWhが組み合わされる。最大トルクは、14.9kg-mで共通する。

今回試乗したのは、114psの方。発進加速は鋭いものの、60km/hを過ぎた辺りから勢いは薄れていく。車重は1410kgと軽くなく、郊外の道では活気に欠ける。

ヒョンデ・インスター 02(韓国仕様)
ヒョンデ・インスター 02(韓国仕様)

加速が鈍いと感じるドライバーもいるだろう。コンパクトカーとして市街地での利用が中心だと考えれば、理解できる特性ではある。

小さなボディを活かし、入り組んだ路地などでは扱いやすい。全幅は狭めで、駐車車両の横などもスルスルとすり抜けられる。背が高めだから、大型バスが隣に並んでも圧迫感は感じにくい。

サスペンションは、もう少し洗練させてもいい。高速道路の速度域では落ち着きが増し、同クラスのモデルより安定感があり、快適に移動できる印象。しかし、車重が影響してか、低速域ではタイヤのバタつきが気になった。

ガソリンエンジンのコンパクトカーの場合、軽さを活かした快活な走りが魅力になる。クルマとの一体感も感じやすい。MTなら、なお一層だ。

一方でインスターの場合、そんな楽しさは得にくい。駆動用バッテリーは重く、トランスミッションはシングルスピード。印象に残るような運転体験ではないといえる。

装備は充実 価格はお高め 競争は楽ではない

英国価格は、94psのエントリーグレードで2万3495ポンド(約456万円)から。今回の試乗車は上級トリムグレードの02で、2万6745ポンド(約519万円)へ上昇する。

ヒートポンプ式のエアコンや、高機能なブラインドスポットモニターを含む運転支援システムなどは標準装備。シートヒーターや熱線入りのステアリングホイールは、02グレードに付いてくる。

ヒョンデ・インスター 02(韓国仕様)
ヒョンデ・インスター 02(韓国仕様)

欧州には、大きさの近い競合としてダチア・スプリングが存在する。全長は僅かに短いが、英国価格は8600ポンド(約165万円)も安い。とはいえインスターの方が洗練度は高く、装備に優れ、航続距離は長い。

シトロエンe-C3はサイズがひと回り大きく、1500ポンド(約29万円)お手頃。航続距離はより長い。新しいルノー5 E-テックは、価格がほぼ同じ。全長は4mを切り、プレミアム感を狙ったモデルとして、直接的なライバルになるだろう。

コンパクトカーの概念へ挑戦するような、インスター。低速域では洗練性に若干欠けるものの、高速域では落ち着いている。小さなボディへ、期待以上の装備が盛り込まれている。シートレイアウトは多彩で、実用性ではクラス上のモデルへ並ぶ。

それでも、高めの価格を納得させることは簡単ではない。走りが魅力的なら、訴求力は更に強められたはず。想定されるライバルは少なくなく、生存競争は楽ではなさそうだ。

◯:多用途な車内空間 小さなボディサイズ 優れた装備
△:ライバルよりお高めの価格 操縦性や動力性能を霞ませる車重

ヒョンデ・インスター 02(韓国仕様)のスペック

英国価格:2万6745ポンド(約519万円)
全長:3825mm
全幅:1610mm
全高:1575mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:10.6秒
航続距離:368km
電費:6.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1410kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:49.0kWh
急速充電能力:85kW
最高出力:114ps
最大トルク:14.8kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事