MKタクシーを取材してみた(後編)【ヒョンデ・アイオニック5長期レポート4】

公開 : 2024.11.20 12:15

編集部はヒョンデ・アイオニック5を長期レポート車として導入。これまであまりEVと縁のなかった編集長の平井がレポートを担当しています。第4回はタクシー車両として導入している、MKタクシー取材の前編です。

運転しているドライバーの評価

(前編からのつづき)ヒョンデとMKタクシーは2022年7月20日にコラボレーションを発表。順次導入している。ここでは実際に運転しているドライバーの評価を聞いた。

まずはいいところから。2022年の導入時よりも知名度はあがってきた。「これ、なんてクルマですか」と聞かれたときに車名を答えると、「ああ、これがですか」と反応がある。天井がスライドで、真ん中にタクシーの行燈があるから完全に開放感があるわけではないが、開くと喜ばれる。液晶パネルが先進的ですごいねと声が上がる。静かで、加速がスムーズ。エアコンをつけなければ530km、つけても450kmは走れるところ。

MKタクシーが導入したヒョンデ・アイオニック5。エアコンをつけても450kmは走る。
MKタクシーが導入したヒョンデ・アイオニック5。エアコンをつけても450kmは走る。    平井大介

一方気になるところ。サスペンションが固め。個人の感想かもしれないが、シートのホールド性が弱くて若干疲れる。車体が大きいから観光エリアの東山の細い道などが厳しい。ラゲッジスペースの床が高くてスーツケースを載せるというより持ち上げる感じになる。新しく入ってきたモデルが電動ミラーなので、慣れるのに時間がかかる。実際にお客さんから「EVってどうですか?」という質問をよく受けるので、いい悪いは率直に伝えるようにしているそうだ。

現場でもやはりインフラの整備は課題と感じている。現在エムケイが所有する急速充電器は、EV導入当初にリーフ用に設置したニチコンの50kWのものから、チェビの180kWまで19機ある(パワーエックスやイーモビリティパワーものあり)。クルマの台数に対しては十分な感じがするが、昼休みと夕方は混みあうとのこと。ちなみに交代前に充電して次のドライバーに渡すが、30分の充電で、20~30%になっていたものが約80%になるそうだ。

タクシー会社が使い倒しても大丈夫

一方、今回お話を伺ったエムケイホールディングスの東真一さんたち管理側も、まずはアイオニック5の性能を評価。安全装置がしっかりしていて、電池の劣化に関しても国産よりももちがいいと感じている。ドライバーの声にもあったが、アイオニック5は京都で使用するにはサイズが大きいので、現在、サイズのちょうどいいコナを3台稼働させているという。10台購入しており、7台は待機中。アイオニック5より後発な分、充電性能もアップしているのも魅力だ。

ちなみに今エムケイにあるアイオニック5は、全て2WD。札幌の営業車に4WDが2台あるが、寒冷地の電池事情などはそこまで大変とは聞いていないそうだ。

取材時で、MKタクシーは105台のアイオニック5を購入している。
取材時で、MKタクシーは105台のアイオニック5を購入している。    平井大介

取材時でMKタクシーは105台のアイオニック5を購入。そのうち63台が稼働している。気になるトラブルだが、複数台で同じ場所が故障するという話はなく、バッテリーの使用状況としても一番ハードな使い方をしていると思うが、今のところ問題ない。まだ使用して2年で、最終的には4~5年使わないと判断できないが、今のところは総じて満足しているそうだ。

この使い方は、アイオニック5のクオリティを実証できるもの。「タクシー会社が使い倒しても大丈夫なら、誰が使っても大丈夫」と言えるだろう。

なおエムケイは京都駅前に専用乗り場を設置。待合サロンという形で、Wi-Fi貸し出しや両替、ベビーカー貸出、荷物預かり(1日1000円で20日まで)といった旅行者向けサービスを充実させている。待合サロンの隣にはレンタル着物のスペースを設置し、そこで着物を着てそのままタクシーで遊びに行くことも可能。書道教室まであり、自分の名前を漢字の当て字を書くというユニークなレッスンも。まさに至れり尽くせりだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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