VW I.D. Rパイクスピーク コースレコード樹立なぜできた? 背景とは
公開 : 2018.08.05 10:10
番外編:ベントレー・ベンテイガW12 量産SUVクラスのコースレコードを更新
リース・ミレンは、彼の持っていたEVコースレコードを、ロメイン・デュマが更新するのを目撃することになったかも知れないが、別の記録をつくるのに、さほどの時間を要しなかった。ワークスのベントレー・ベンテイガW12をドライブしたこのニュージーランド出身レーサーは、パイクスピークを10分49秒902で駆け上がり、量産SUVの新たなコースレコードを打ち立てたのだ。
量産クラスにエントリーするため、609psを誇るベンテイガに許された改造は、ロールケージ、フロントのレーシングシート、リアシートの取外しと消火システムといった安全に関するものだけだった。巨大なカーボン・セラミック製ブレーキですら、量産モデルに設定されているオプションだったのだ。
セットアップ作業の大半は、ミレンがこのSUVの巨大なボディを把握するのに最適な、十分に高いシートポジションを見つけ出すことと、重心位置を低く留めることに費やされた。懸念もあった。ベンテイガが高地テストを行ったのはオーストリアのグロースグロックナーだったが、標高はパイクスピークの4352mには及ばなかったからだ。それでも、冷却システムは持ちこたえ、ハンドリングは素晴らしく、雨の影響があったにもかかわらず、ミレンの予想よりも速いタイムをたたき出したのだ。まさに。
「練習走行のあと、10分50秒を目標に設定していましたから、49秒台というのは、まさに狙い通りです」とミレンは話す。「クルマのバランスも予想通りでした。量産クラスですから、設計通りのパフォーマンスが発揮されて当然と思うかも知れませんが、パイクスピークのようなところで、限界まで攻め込んだのですから、素晴らしいといえるでしょう」
平均時速107km/hとなるこのタイムによって、2014年にポール・ダレンバックがワークスのレンジローバーで記録した12分35秒630(このタイムはヒルクライムで記録されたものではなかったが、主催者によって公認された)というコースレコードを更新したのだ。
ミレンによれば、タイムの上限を決めるのはベンテイガの性能ではなく、その車重ゆえに、ノンスリックのピレリDOT(Department of Transportation:各国規制当局による安全性認証済み)タイヤが、コース全体をとおして持ち堪えることができるかどうかなのだという。「量産クラスでは、常にタイヤの能力が問題となります」とミレンはいう。「ベンテイガにはまだ余裕がありました。非常に驚くべきことです」