直線的なデザイン

EB110 GTの場合、きちんとメンテナンスされた個体であっても、英国では2500万円あたりから入手可能だ。今回ご登場願った希少なEB110 SSだとさらに1300万円ほどの上乗せが必要となるだろうが、もっともそれは売り物が見つかればの話である。EB110を買うということは、ヴェイロンよりもさらに希少なブガッティを選ぶということなのだ。個体数の少なさが価格が押し上げられてしまうのは致し方ない。

反面、EB110はある種忘れられたクルマとなりつつあるのも事実だ。製造していた企業がすでに消滅し、視覚的なオーラでもスペック上のドラマ性でもヴェイロンにかなわないのだからやむを得ないだろう。しかしそれでもなお、カーデザイナーのクリス・フラバレックが所有する純粋無垢なレモンイエローのEB110 SSを目の前にしたときには、感動を覚えずにはいられなかった。

今どきのデザインに比べるとひどく直線的で、1990年代半ばの当時よりも際立って個性的に見える。マルチェロ・ガンディーニが引いたラインは微妙な曲線でつながれ、それが見どころになっているのだが、初めて見る人にはむしろ高くそびえるアウイングや両サイドに穿たれた奇妙な丸い穴のほうが興味深いかもしれない。

EB110のSSをGTと見分けるわかりやすい特徴はふたつある。前出の丸い穴が並んだパネル（GTは艶のあるブラック）と固定式のリアウイング（GTはリトラクタブル）だ。ほかにもホイールデザインやブレーキ冷却口の有無で区別できるが、なにより重大かつSSの存在意義を象徴する相違といえば、300kg以上も軽量化された車重を始めとするチューニングである。

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