新旧ブガッティ対決 ドイツ産ヴェイロン vs イタリア産EB110 回顧録
公開 : 2019.01.05 07:10
技量が求められるV12
現代のスーパーカーのような凝った仕掛けはなく、普通にキーをひねってV12を始動させると、しびれるように強烈な、紛れもないイタリアン・エキゾティックのアイドリングノートに包まれる。
この時点でそれまでの疑念は嘘のように消し飛んでしまい、さらに絶妙な操作感のギアとステアリングが加わわるのだから、ほかになんの文句があろうか。Aピラーの太さとペダルのオフセットが少々気になるが、運転は意外なほど簡単だ。
V12はまことに素直で扱いやすく、ターボの四重奏が60個のバルブに驚異的な速さの上下動を強いて611psを叩き出す実力が秘められているはずだが、その気配さえほとんど感じ取れない。
あまりの従順さに驚かされると同時に、特に乗り始めは拍子抜けしたような失望感すら覚えてしまったほどだ。乗りこなすには技量を要する荒馬っぽいところはまったく見られず、600psを超える出力を秘めたクルマとはとても思えない。
ただし、本気で走らせるのであれば、相応の技量が求められるのは当然だ。ラグが大きい旧式な4基のターボとワイドレシオなトランスミッションとの組み合わせのため、景色が線になって流れる速度でこのクルマを走らせようとするのであれば、エンジンの回転数とギア、それに運動量を常に意識し続けなければならない。