素晴らしい走りと質感

凄まじくクイックなステアリングはコーナーを厳しく攻め込む気になるだけの一体感をもたらしてくれて、ひとたび側溝に落ちたら数百万円の出費になることなどきれいに忘れてしまう。これにはブレーキの信頼性も大いにかかわっている。さらにヴェイロンのタイヤは、いざというときにはスパイクが飛び出しているのかと思わせるほどグリップに優れている。

フィードバックも細やかだ。ステアリングの手応えが掌中で微妙に変化し、極上のクッションが詰まったシートはクルマの下の細かな地形図を端正に伝えてくるのである。繊細にして豪華なインテリア全体の仕上げについても忘れてはならない。

まさにこの価格のクルマに期待してしかるべきクオリティだ。強いて惜しまれる点を挙げるとすれば、スターターボタンを押すまでは手動で行わねばならないシート調整くらいのものである。

さらに楽しませてくれるのが実に表情豊かなサウンドで、セントラルヒーティングのシステムから聞こえるようなゴボゴボした音から、まるで飛行機に乗っているときのような、風切り音とエンジンの轟音とが一体となった爽快感あふれるシンフォニーまで、実に多彩なのである。特にハードに加速させているときの音は、もう考えすらもおよばないくらいだ。

しかしこのクルマは、決して荒々しいマシーンではない。そのマナーのよさは、たとえばガソリンの爆発がダイレクトに乗り手の感覚を圧倒するようなフェラーリ・エンツォなどとは対極に位置している。

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