新旧ブガッティ対決 ドイツ産ヴェイロン vs イタリア産EB110 回顧録

公開 : 2019.01.05 07:10

自家用ジェットを動かすより高いメンテ費用

そういう性質とESPによって保障された足元の確実さから、ヴェイロンは乗り手との一体感に欠けると非難する人もいる。もっと激しい烈火のごときフィードバックがあったほうが乗り手が鼓舞されるという意味では、その意見は正しい。

だが、それはブガッティのやるべき使命ではないだろう。それに、なによりも重要なのは、十分なグリップ感よりも、ワープするような速度で景色が圧縮されて見えるような瞬間のほうがこのクルマの実力を端的に証明しているという事実である。

それでは、この別世界のようなパワーの奔流を手に入れるために必要な金額をどうやって稼ぐか。車両本体価格などはまだ序の口だ。問題はメンテナンスに要するコストである。一式で345万円もするタイヤをブガッティは5000kmごとに交換することを推奨しており、さらに3回のタイヤ交換ごとにホイールも交換しなければならない。その価格は700万円である。

ブレーキディスクとパッドの交換ともなれば1000万円を用意しておく必要がある。定期保守点検はおそらく300万円程度となり、エンツォよりも50万円は高くつくわけだ。要するに、ヴェイロンのオーナーが自分の愛車を駆って、欧州でも特に風光明媚な地方で素晴らしいドライブを楽しもうするなら、そこまで自走で往復したあとに発生する心臓も凍るようなメンテナンス費用よりも、そのたびにクルマを陸送で先発させ、自分は自家用ジェットで向かった経費のほうが安上がりなのである。

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