試乗 ルノー・クリオ(ルーテシア)TCe100 1.0L3気筒ターボ 優秀な素地
公開 : 2019.07.20 10:10 更新 : 2019.08.13 15:53
物足りないエンジンとステアリングフィール
ステアリングの操作感は滑らかだが、高い位置のシフトノブは、正確な操作が必要なようだ。変速時のフィーリングはややザラついたもので、楽しさを引き出してくれるものではない。前席空間の前後長もたっぷりあり、操作位置は良好な点は、標準グレードとしては評価できる。しかし、入力に対する動作感は物足りないことも事実。
クラッチは羽毛布団のように柔らかく、ステアリングは先代よりもクイックになっている。つまり、低速域中心の都市部での運転のしやすさを主眼に、重み付けが決められているのだろう。スーパーミニ・カテゴリーのクルマの主要な用途を考えれば、当然のことではある。しかし、AUTOCARの試乗記を読んでくれているようなクルマ好きにとっては、もっと手応えが欲しいところだと思う。
ダウンサイジングターボとなる1.0ℓ3気筒エンジンも、意外なことに及第点といったところ。特にフォード製のユニットがパワーと個性を兼ね備えていることを考えると、少々残念だ。まるでターボ過給圧が高すぎるのかのように、低回転域でのトルクが細いうえに、5000rpmを超えると単調なエンジンノイズがうるさくなってくる。
一方で、低負荷時は極めて静かで、ライバルモデルでもクリオと同等の静寂性を持っているものは少ない。TCe100の高速道路でのクルージングはとても安楽ではある。
期待ほどではないエンジンとは裏腹に、シャシーのダイナミクス性能は、新しいクリオの最大の魅力だといえる。サスペンションの衝撃吸収性は抜群で、ボディを揺らすことなく波打ったような路面を丸め込む。鋭い入力が加わると流石に衝撃もそれなりだが、このボディサイズなら無理なお願いだろう。フォルクスワーゲン・ポロはクリオより唯一優れているモデルとなるが、その他のライバルはクリオには及ばない。