ボディ肥大化の功罪 理由は安全基準/食生活 ドライバー心理も影響 限界は近い?
公開 : 2019.08.04 18:50
道路はそのまま 死活問題
一方、道路幅そのものは昔からまったく変わっていない。最近、ある友人は、ロンドンのどこにでもあるような道で、ベントレーのコンチネンタルGTとレンジローバーがすれ違えなかったことが原因で、渋滞が発生するのを目撃しており、その渋滞の解消には20分もかかったと話してくれた。おそらく、この英国の首都では、こんな光景は日常茶飯事に違いない。
だが、ボディの肥大化に直面しているのは決してラグジュアリーモデルだけの話ではない。1974年の登場以来、いまでは7代目を数え、近く8代目へと移行する予定のゴルフは、アバが一世を風靡していた頃に比べ、169mmもそのボディ幅を拡大させており、おそらく、8代目もさらにワイドなモデルになるのだろう。
1779mmもの全幅を持つ7代目ゴルフは、ボディ幅が1830mmだった1973年モデルのフェラーリ・ベルリネッタ・ボクサーとさほど変わらぬまでに成長しており、現行ミニ・ハッチバックのボディは、1997年に登場した996世代のポルシェ911カレラよりも、わずか3cmほどスリムなだけなのだ。
小柄だと思われているマツダMX-5(日本名:ロードスター)でさえ、1973年モデルのポルシェ911 RSに比べれば若干幅広のボディを纏っている。
実際、50年以上にわたり拡大を続ける911のボディは、道路幅との闘いの歴史でもあった。1963年登場の初代のボディ幅が1610mmだった一方、最新の992では1852mmにまで達しており、これは先代991比でも44mmの拡大となる。
この911の肥大化は、運転好きにとっては死活問題であり、いまや、公道上でミスを許容するだけのマージンがほとんど残されていないため、ほとんどすべての歴代モデルに比べ、最新の992は扱い易くもなければ機敏でもない。
それでも、ポルシェでは、先代991のデビュー時と同じように、この最新の911はスラロームではこれまでのどの911をも凌駕しており、タイムを測れば、すべての911のなかで最速だと言うだろう。