ボディ肥大化の功罪 理由は安全基準/食生活 ドライバー心理も影響 限界は近い?
公開 : 2019.08.04 18:50
トレンドも影響 米国市場は特別?
だが、そんなことは問題ではない。大きく寝かされたAピラーによって、1997年以前のモデルとは比べ物にならない程、コーナーのアペックスが見づらくなっており、実際の路上で、この最新の911を扱い難く感じさせている。
そして、この悪化した視界と、拡大したボディ幅は、衝撃吸収と向上するパッセンジャーの体格に対応すべくデザインされた結果なのだ。
デザイナーたちは、クルマの見事なルックスには大径ホイールが不可欠だと考えているが、同時にタイヤ幅も増やさなければ、まるでオートバイのタイヤのようになってしまうことから、必然的に大径ホイールとワイドなホイールハウジングはセットであり、さらに、相応の回転半径を確保するには、トレッドも拡げる必要がある。
そして、トレンドというものも無視する訳にはいかない。自動車メーカーはつねに他社の動向をチェックしており、トレンドに背を向けるなど経営責任の放棄に等しく、あるメーカーがモデルを大型化すれば、他社もそれに追随せざるを得ない。
時には、モデルチェンジにあたって、ボディ幅を拡大させないという勇敢なメーカー(新型イヴォークは旧型とまったく同じボディサイズに留まっている)や、プジョーやヴォクゾールが最近行ったように、ボディサイズを縮小するというケースさえ見られるが、多くの場合、クルマのボディサイズは拡大するばかりだ。
さらには、多くのプレミアムブランドやラグジュアリーブランドにとって、米国市場の存在もボディ肥大化の理由のひとつだろう。
英国の路上では大きく見えるかも知れないが、米国で見るレンジローバーは、それが都市部であれハイウェイであれ、決して大柄なモデルには見えず、それでも、フォードF-150やキャデラック・エスカレードに対抗しなければならない一方、米国市場で、レンジローバーのようなモデルは、ボディサイズの割りに高価なプライスタグを掲げていると見做されてしまっている。