ボディ肥大化の功罪 理由は安全基準/食生活 ドライバー心理も影響 限界は近い?

公開 : 2019.08.04 18:50

番外編2:アバルト124スパイダー vs ポルシェ911 カレラ4S

多くが「なぜ?」と思うだろう。

ポルシェに問題があったわけではない。低走行でコンディションも良好だったが、最初にこのクルマを購入しようと言い出し、共同オーナーでもあった妻もわたしも、それほど運転することはなかった。

中年を迎え、人生のカンフル剤として手に入れたモデルであり、ショールームに置かれていたカレラ4Sのセクシーなリア(ワイドボディを持つ996カレラ4Sのリアは格別だ)に一目ぼれした彼女が、強く購入を勧めた1台だった。

911である必要はなかったが、妻から半分資金を出すから購入しようと言われて、ほかにどうすれば良かったのだろう?

だが、自宅周辺で感じるカレラ4Sの乗り心地はやや荒々しく、タイヤノイズが耳につくと同時に、321psのパワーで0-100km/h加速5秒のパフォーマンスをフルに発揮するには、このクルマのボディはやや大き過ぎた。

ハートフォードシャーに拡がるカントリーロードは、英国では一般的なものであり、ときに十分な道路幅と滑らかな路面に出会うこともあるが、サイクリストやモータリストであればご承知のとおり、ほとんどが非常に狭く荒れた路面で、まるで絵画のように美しい生垣や木の葉がドライバーの視界を遮るこうした場所では、911のドライビングを楽しむどころではなかった。

荒々しく、ときに不快にも感じる乗り心地のせいで、このクルマのステアリングを握る機会は少なく、さらに、本来911とは長距離向きのモデル(そうした場面ではロードノイズなど気にならない素晴らしい走りを味わうことができる)であり、地元を走り廻るようなクルマではないという思いに囚われることもあった。

だからこそ、心残りが無かったわけではないが、手放すことにしたのだ。


そして、新たに我が家にやってきたのがアバルト124スパイダーであり、サルディーニャ島で行われたアバルトのイベントで非常に楽しませてくれたこのクルマを探し出すべく、去年の12月、走行距離わずか37kmの登録済み車両の驚くようなオファー(ディーラーの年間販売目標を達成するために違いない)を見つけるまで、ときどき中古車情報のチェックを続けていたのだ。

33%ものディスカウントというこの魅力的なオファーのお陰で、フィアット124スパイダー同様、このクルマも英国試乗から撤退しようとしているという最近のニュースなど、ほとんど気にならなかった。

確かに、0-100km/h加速では911カレラ4Sよりも1.8秒遅く、その最高速もポルシェの280km/hには遠く及ばないばかりか、マツダベースのフィアットをベースにしたアバルトという、その出自もなんだかよく分からないモデルではある。

だが、リアを駆動し、合法的な速度域でコントローラブルなドリフト状態に持ち込むことのできるこのクルマのアバルト製エグゾーストからは、魅力的なサウンドが響き渡り、ポルシェよりもはるかに低い速度で、気持ちの良いドライビングの楽しみを味わわせてくれる。

そして、このクルマはポルシェよりもスリムなのだ。

確かにその差は大きくはなく、1829mmという911カレラ4Sの全幅よりも、89mmだけ狭い1740mmというものだ。それでも、現行ゴルフよりも49mm、ポロよりも11mm、そして、最新の大きくなりすぎた992型911よりも112mmも細身のボディを纏っている。

まさに、笑顔のダウンサイジングである。

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