【シティコミューター原点回帰】日産の軽EV「IMk」、スマートから学ぶこと 「売り方」が鍵
公開 : 2020.05.13 05:50 更新 : 2020.05.13 07:45
軽EVの普及 最も重要なことは
軽EV普及を考える上で、最も重要なことは「どうやって使ってもらうか」である。
いつ、誰が、どこで、なぜ、どのように使うか、である。
これについて、日産の考え方は、IMkに関するニュースリリースに書かれている。
「革新的な小型シティコミューター」である。
「シティコミューター」という言葉、70年代あたりから世界各国で新しい移動を議論する際に使われるようになった。
文字通り、「都市内を移動する乗り物」という意味だ。長年に渡り、自動車メーカー各社がEVに対してよく使う表現だ。
換言すると、EVはガソリン車やディーゼル車に比べて航続距離が少ない、という技術的な制約のなかで、都市部での短距離移動しかできない、という考え方だった。
それを、日産が「シティコミューターという常識を崩す、ファミリーカー」(日産欧州幹部)としてリーフを市場導入。
追って、テスラモデルS/Xがリーフを超える大容量バッテリー搭載となったことで、「EV=シティコミューター」のイメージが大きく変わった。
こうした流れの中に日産アリアもいるが、それとは正反対に、IMkはEVの原点回帰ともいえるシティコミューターだという。
とはいえ、日本での軽は、すでにシティコミューターであり、わざわざEVにすることで、事業としての勝算はどこにあるのか?
単純な売り切り型ビジネスなら難しい
IMkによる、EVのシティコミューターへの原点回帰。
こうした考えで先行しているのが、ダイムラーのスマートだ。
スマートの基本構想は1970年代に生まれ、90年代に時計メーカー・スウォッチとの連携によって量産されたが、多モデル化の中で、事業規模の拡大で限界を向かえた。
その際、ダイムラーがとった戦略が、CAR2GO。都市内でワンウェイでの乗り捨て自由型カーシェアとして普及した。これを基盤に、スマートは全車EVとなった。
さらに、BMWのDrive Oneと融合して事業拡大を目指すも、北米事業からの早期撤退を余儀なくされるなど、新しいサービス事業の確立で再び、苦労している状況だ。
こうしたダイムラーの事業について、日産は当然、詳しく検証しているに違いない。
仮に、IMkが200万円を切る精力的な価格付けになっても、プロパイロット2.0が標準装備になったとしても、5Gを活用したコネクティビティ技術が満載されたとしても、単純な売り切り型ビジネスとするだけでは、IMk量産モデルの販売は大きく伸びないと思う。
IMkを小型シティコミューターと呼び、枕言葉には「新時代」「革新的」と並べるからには、日本を含めた世界各国で一気に普及するような「隠し玉サービス事業」があるのだろうか?